モノクロの君に恋をする 雑感

 背伸びして受験した東京の大学に合格し、希望の漫画研究会に所属した少年・小川卓巳。彼は明るいキャンパスライフを夢見ていたが、待っていたのは癖のある研究会の面々との騒がしい日々だった。漫画について大いに話し合い、漫画家を目指す同級生の女子から作品を魅せられたことから、小川自身の燻っていた漫画を描こうとする想いが再び募っていく――


 こういうの大好き――という、見事なぼんくら青春小説でした。

《(略)ヤバいよね、超青春っぽいよね。サークル活動、一層楽しくなっちゃうよね》
《青春とか言うな》
    (坂上秋成.モノクロの君に恋をする(新潮文庫nex)(Kindleの位置No.2092-2093))

 "まだ"漫画好きなだけの何者ではない少年が、居心地の良い場所を見つけ、今をなんだかんだ楽しみながら、生きたい未来へ足掻いていく。
 馬鹿馬鹿しく騒がしいけど信頼でき漫画に熱い思いを抱く上級生たち、漫画家を目指す道の先を行きながらこちらを慕ってくる美少女の同級生との、刺激のある日々。
 これぞ青春、これこそ青春! という、ある種の理想郷の描き方の妙。
 また若者の自意識はあるし、痛いけど、痛々しくはない。それれぞれ欠点を抱えている者同士の連携はあっても、舐めあいにならない、駄サイクルに陥らない。
 なかなか難しいオタクの生き方のバランスも絶妙。
 はたまたヒロインとは最高にキュートなラブコメを楽しめますし、こう、ツボをつきまくられるとはこのことかと。
 
 以上。最高に好きでした。文句なしにお薦め。

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