よふかしのうた4 雑感

 毎回毎回、小さなコマからシチュエーションまで、フェチのツボを力強く押してくれる本シリーズ。
 今回もまた暗くて明るい『よる』のお話として最高でした。

 シリアス的に大きな物語が進む後半という見所や、夜の時間を過ごす教師のささやかな挿話でほっこりするとかありますが、本巻の肝はやっぱりですね。
 表紙でもありますが、メイドですよ、メイド。
 ありふれたメイド喫茶での、ちょっとした盗撮事件の顛末を描いていて、そこで表出する拗らせ方の扱いが非常に好みでした。
 いや、美女のメイド姿が艶やかで良いですね、という個人の嗜好の話でもあるのですがね。その艶やかと見られる姿をする事の自意識はどうなるのか、ということで。どこに承認要求を置くか――そこまで特殊ではない自分への拘りと個性の振れ幅内の異常さの描き方が上手くて、あまりにもありえるらしさ過ぎて、手が届きそうで居やしない見事な地味な美女のキャラへと結実していたのです。
 夜にそのひとのそのひとらしさが出て、その夜と在り方を下手に隠さずそういうものだと受け止めてくれる幸せさ――これまでのストーリーの流れの上で、今回のメイドの描き方には見事に自分の心の柔らかい所を刺激されました。


 以上。大きな物語がないと停滞しかねないのですが、これからも末永く魅力的な夜と人とを描き続けて欲しいですね。

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 <既刊感想>
  よふかしのうた1 雑感
  よふかしのうた2 雑感
  よふかしのうた3 雑感