"古きよきRPG"を目指して作られた本作。
そもそもRPGは多様性を容認する器であり、原点回帰の原点ってどこという話ではあります。
しかし私にとっては原風景はSFCのFF6、DQ6、テイルズオブファンタジアなので、良く言う嘗て良かったJRPGです。
個人的に成り立たせる要素としては、説明過多になりすぎない仄めかすだけで魅力的な世界観、単純だが奥行きのビジュアル、主張しすぎない美しい音楽、そして"楽しい"戦闘、或いはゲーム内を旅をする快感、と言ったところでしょうか。
本作はばっちり私の好きな要素が籠められたRPGでした。衒いの無さが良い方向に出ていたと思います。
戦闘――ATB、アクティブタイムバトルシステム。ATBゲージが溜まると行動できるいつものスクエアRPGのシステム。こちらから行動を仕掛けるアクションと、敵の行動へのリアクションのどちらも考える必要があります。ボス戦で、常に全体回復キャラとして行動を残して、全体攻撃やきつい攻撃を喰らったときに対応出来るようにし、一気呵成に終わらせたときには連携攻撃をぶっ放す――といったタイミングの見測りは楽しかったです。
実のところ、最近のスクエア作品だと、ブレイブリーシリーズの"ブレイブ&デフォルト"システムもそうですが、戦闘システムをより面白いものにしようとする工夫が感じられて好きです。たとえ実際面白くなくても、いつかまた素晴らしいRPG戦闘を見せてくれるのではないかと期待させるものがあります。
レベリングはほぼ問題ありませんでした。ラスボスを倒すだけなら平均LV40前後有ればいけるので、そこまでレベル上げのためだけに行動しなくて良かったです。
やりこみ要素はありますが、そのあたりはお好きにといったところでしょうか。
ビジュアル――雪に覆われて終わろうとする世界の風景。歩いていくとどこかで雪が落ちる音がすることに、ここまで心動かされるのかと。
雪で統一されているので単調になりやすいところを陰と日向で抑揚をつけて飽きさせなかったですし、旅が進むにつれて次はどのような風景を見られるのだろうかと心待ちにしていました。あと旅という観点からでは、どのRPGでもそうなのですが、移動する手段に俯瞰する飛行船などが追加されることで地図が自分の中で結ばれる快感は健在でした。最初は徒歩で吹雪を越え山を越え、苦労として得た飛行船でかつて辿った道を悠々と俯瞰するのはマッピング物が好きな身としてたまらないものがありましたね。
それに全体的な世界のボリュームが少なかったのも飽きさせる前に切り上げさせるため良い方向に向かえたと思います。
音楽は逸品。いけにえと雪のセツナ オリジナル・サウンドトラック | SQUARE ENIXのページから視聴して出来ます。物悲しく透明なBGMが終わろうとする雪の世界を旅する雰囲気をより鮮やかに彩ります。
最後にシナリオについて。個人的に感じたテーマは「生き残ること」。
いたるところで何故このような世界で生きなければならないのか、またあのような出来事を経たのにどうして生きているのだろうか、とかメイン・モブ含めて悩むキャラばかりです。
イベントもまた死んでおしまいにする思想とはほど遠いものがあり、生き恥を晒せというものばかりでした。どんなに傷ついて汚れても、たとえ生きさえすれば終わりではないし、どんな形でさえ続いていくことで何かが起きる。そこに待つのが輝ける救いであるように――足掻いていく、と。
顕著だったのは失われた王国の末裔たるジュリオンという女王。彼女に与えられた苦難には心躍るものがあり、妄想が捗りました。
失われた王国の女王は雪影に一人沈む。雪崩に巻き込まれぼろぼろの身体、残り少ない体力。付近には最後の力で倒した魔物の暖かい死体。血を汚すも忌避なく、ただ本能が雄たけびを上げる。生き残らねばならない――!
いやあ、わくわくしますね!
苦難が大きければ大きいほど、その相克もまた栄えるというものです。
さて、主人公パーティは生きながら迷う人々を「今はただただ生きろ」と救っていきます。ただ彼らの最後の目的は最初に提示されていました。ヒロインをいけにえにする――「生かすために殺す」という矛盾を抱え、彼らが最後に本当に殺すのか、どのような結論に至るのか、それもまたラスボスを超える原動力になりました。
そしてまた、生き残ろうとしていたのはラスボスも、ラスボスを生み出した原因も同様で。
最後の選択肢。どちらを選んでも、恐らくThe ENDへの筋道は揺るぎもしないでしょう。だからこそ、納得の行く選択を――
以上。無茶苦茶出来が良い訳ではないですが、かなり良いRPGでした。
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