同棲生活 1-3 雑感

 ライターをしており在宅勤務の年上・みゆきさんと、一般企業に勤める年下・ゆうちゃんとの社会人百合同棲物。
 基本的に部屋での2人の日常を描き、あまり部屋の外は描写されません。そのカップルが同棲している空気を吸えるのがラブコメ的に秀逸でした。

 
  (同棲生活 わたしを好きってことでしょ、Kindle No.22)

 好き合っている者同士の2人だけだからこそ醸し出す気安さ。例えば大きなソファで互いに向かい合って足を投げ出し座って本を読んだりDVDを看たり、寝室で横になって眠って抱き着いたり手を繋いだりちょっかいをかけたりかけられたり、食事の準備で相手の物を思いやって用意したり好き勝手やって用意されたり、甘々なやり取りの数々。
 前提としてそれぞれ大人になった社会人であることで相手の人格を尊重し踏み込み過ぎないという線引きが確かにあります。これ以上は個人の管轄というのがあるにはあるのですが――その区切りをあえて判っているあまえで超えてくる塩梅とか、或いは超えすぎてちょっと気まずくなりながらきちんと和解する仲がいい2人の仲違いの在り方とか、あとは互いに仕事をしているからこそぴりぴりしたり落ち込んだりしている時の対応とか、全てをひっくるめてコミュニケーションの描き方が心地良かったです。

 そしてとりわけ巧みで好きだったのは性的な触れ合いについて。

 
  (同棲生活2 わたしだけが特別ならいいのに、Kindle No,15)

 そりゃがっつり性行為を描く良さはそれはそれであるのですが、本作はそこには足を踏み入れません。
 ――しても、良い?
 ――するよ?
 そういうえっちいことに持っていく前の当たり前の確認が大事にされます。
 いつもお互いにヤル気が一致するわけではないし、仕事の都合・体調、そしてなによりも気分で嫌だな~と思う時もあって、やりたくても相手がやりたくなければまあ仕方がないよね、と。
 だからこそ敢えて強気で攻めて押し倒したり、攻めて欲しいと誘い受けしたり、えっちい行為をしながらえっちい雰囲気を作れなかった何とも言えない白々しい瞬間だったり、そんな気はなかったけど何故か合意でエロいことになだれ込んでいたり、と性行為に至るあれこれのバリエーションが数多く描かれ、非常ににやにやとしましたね。
 性行為の前の丁々発止を数多く描く作品はそうはないので、個人的にはなかなか得難い作品でした。


 以上。良い百合物だったかと。個人的に好きです。

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