あかねさす柘榴の都 3 雑感

 母を亡くし叔母に引き取られてグラナダで住むことになった少年・夏樹の生活を描いた漫画の最終巻。

 最初は異国にも共同アパートにも叔母にも慣れなかったのですが、ゆっくりと親しんでいって、彼の居場所になってきています。

 kindle No.13)

 自転車を手に入れて移動する範囲が広がり、また知らない道を開拓し、あるいは季節が変わって新しい風俗――秋の涼しさやグラナダの栗の味とか――を知る。
 そして余裕が出てきて、少し立ち止まって思い返せるようになり、自分の将来や、日本に帰ることの有無を考えるようになる。
 子供の頃はもうすぐ終わりで、年を重ねてしまえばいつしかどこにでも行けるようになって、だからこそどこにいるのか自分で決めるようになるのです。
 短い話数なのですが、少年が青年/大人になっていく一つの過程として素晴らしい塩梅でした。
 夏樹の物語としてある程度語るべきことを語り切って、大きなハコとしてアルハンブラ宮殿も堪能してグラナダも知って、3巻の良い頃合いで完結を見たと思います。個人的にはまだまだグラナダでの日常を読みたかった――というのはあるのですが、こういう漫画はまだ読みたいぐらいが丁度良いのかもしれません。


 以上。しみじみと良い漫画でした。

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 <既刊感想>
   あかねさす柘榴の都 1,2 雑感