Re:LieF 〜親愛なるあなたへ〜 感想

 挫折や問題があった若者を集めて学園生活を過ごさせて再起させるリハビリプログラム、トライメント計画。その計画に参加した青年達が久方ぶりに訪れたゆっくりとした時間の中で再度社会に巣立って行くために自らを見つめ直してくのを描いた学園物。


 本作の社会生活をある程度送ってからの学園生活の再演――というコンセプトは個人的に結構響きました。
 集まっているのはある程度は良識が育ったいい大人で、辛い境遇があったからこそ今此処にいるという共通認識があるため、無為に相手を傷つけることがない面々。彼らが同級生となり、討論したり、プレゼンしたり、資格勉強したりする。そして学園外では寮暮らしで互いに行き来したり、車でドライブしたり、スーパーで買い出ししたり、偶には酒を嗜んだり。
 ひっくるめて学園ごっこをしながら「自分探し」の再開、それも思春期を過ぎて人格形成が終わったからの「自分探し」となっています。それを集っている人間がひねたりせずに真剣に行うからこそ、お遊戯に落ちていませんでした。そのために滅法居心地の良い空間に仕立て上げるのに成功していたと思います。
 もしも心が折れた時の良い意味での逃げ場で、もしもの時には自分も――と思ってしまった時点で私の負けでしょう。繰り返しになりますが、ある程度は良識が育った面々が理解したうえで学園生活をするという有様は本当にずるい。僕の心の片隅のどこかにある後悔にクリティカルであり、自分はこの作品に弱いのだと自覚する前に、この作品にどっぷりとはまらされました。
 このあたりは個人差があるでしょうし、何やっているんだと思う方もいるのもきっと事実かなと。
 
 
 そういうベースを元に繰り広げられるシナリオですが……。うん、粗は探せば出てきますし、もうちょっと上手くやって欲しかったという要望は多岐にわたりますが、総じればかなり出来が良かったように思えます。正直処女作としてはかなりのレベルかと。
 進化の最前線に立ちたいという望みを持って突っ走っていったヒロインを主人公が待ち続ける、ももシナリオ(常春の島で雪降る中人工知能と共に待ち続けるエンディングの素晴らしさといったら!)。
 進化をコントロールして人の生活に役立てたいヒロインを置いて主人公が突っ走った、流花シナリオ。
 進化と人とでコミュニケーションを取ってバランスを取りたいヒロインと主人公とが共に歩む、日向子シナリオ。
 それらを経た上で、各ヒロインルート毎で取られた主人公の行動は正しいかもしれないが、決定的な誤りを含んでいた――となるあたりは本当に胸に痛かったです。正しいからこそ間違っているというのを直視する勇気なんて、ちょっとそうは持ちようがありません。だからこそかなり迂遠に物事は周り、ヒロインらはめっさ苦労することになります。
 故にきっと、最後に迎える何気ない大団円は尊いもので。
 
 すべてが平穏無事に回ってヒロインがベンチに座って一息つく風景。ここに至るまでの労苦をプレイヤは知っており、まあやれやれだよねとヒロインに同期して胸をなでおろすことになります。
 この展開――主人公に対する最大限のケアが終了するのと同時に作品が終了する在り方は一つのゲームとしてお見事かと。

 
 大きく見れば大いに良しだけど、じゃあ細部はと言うと、うーん。
 時々書きたいシーンを盛り上げればOKで話の整合性をうっちゃっているのはどうかと思いましたし、実際ぶつ切れになっているのは好感度減です。またTrue以外のエンディングの尻切れトンボさは作品の本幹とは関係ないからしょうがないとはいえもうちょっと丁寧にやっても良かったんじゃないかなと。
 ただ書きたいシーンの描きっぷりがあまりにも素晴らしいため、細かいことは良いじゃないかと擁護したくはなります。
 例えばクライマックスのピアノのシーン。

 ここの盛り上げは屈指のものかなと。


 SF設定に関して真面目に突っ込むのは野暮でしょう。


 なのでまあまとめれば、褒め称えたいところ。細部の向上は今後に期待すればよいんじゃないですかね。


 次いでグラフィックに関して。
 本作は販売前から非常に美麗なグラフィックで注目を集めていました。その期待は裏切られず、人物絵、一枚絵、背景などなど全てをひっくるめたグラフィックは全編通してレベルが極めて高かったです。また構図や演出といった魅せ方も巧みであり、新たな絵が出てくるたびに感心することしきりでした。裸の立ち絵もきちんと使っていましたし、リソースの裂き具合のリッチさは今後も続けて欲しい所です。


 次にキャラについて。無為なキャラ立ちはないものの、好感度が高いキャラがそろっていました。
 特に流花は社会人ヒロインとして完成度が高く、社会人ヒロインときちんと恋愛している感じはなかなか類をみないものでした。GJです。
 筆頭ヒロインに近い日向子は日向子で得なキャラクタになっていました。とぼけたふんわり感はエロゲ界でも一二を争うことでしょう。

 や、ほんと可愛い。


 最後にエロシーンに関して。量は乏しいものの、質は十分。テキストは兎も角としてエっちいグラフィックは素晴らしい。まじ最高。
 鎖骨や肋骨の曲線の妙。そして、ちょっとぽっこり出たお腹の愛おしいことといったら!! 
 エロCGを見ているだけで無限に時間を潰せます。


 以上。個人的には満足いきました。他人に薦めるかと言うとちょっと難しい所です。

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