人類が衰退しつつある未来、運び屋ジュードは人類復興の為と称して知性あるアンドロイド・フィリアを届けるように依頼される。生まれたばかりのフィリアとの旅路は波乱づくめであった――
Keyによるキネティックノベル。
久々の田中ロミオシナリオということで発売をわくわくしながら待った次第。
全体的にはその期待に応えてくれる出来でした。
まず荒廃した世界を渡っていくロードノベルとして非常に楽しかったです。例えば下手に見つかれば死が免れない何千トンもある巨大なシンギュラリティマシンを遠目にしたり、例えばアーコロジー化した都市の成れの果てを踏破したり、もはや今生きている人間には再使用できないオーバーテクノロジーとそれが朽ちていく途中の数々を目の当たりにするのは心躍るの一言。それは牙を向くだけではなく、たまにはちょっといいことが起きるのもまた趣きがあり、今度は何が出てくるかと旅路に引き込まれていきました。
『終のステラ Stella-of-The-End』 https://t.co/cDpyGTnIoS #終のステラ pic.twitter.com/aDmxrk4Vhr
— ぱぶ (@pub99) 2022年10月10日
いや、こんな列車に乗れるとか思いもしなかったのですよ。
あるいは衰退する人類に出会っていく記録として。これはクロスチャンネルや最果てのイマでも取り上げられていたのでシナリオライタの根本にある問題意識の一つなのでしょうが、社会と隔絶した人間は獣と化すのだ、と。獣っぷりをまざまざと見せつけて来ます。
そして何もかもをひっくるめてSFとして嬉しくなる作りでした。
人類愛を初期設定された知性あるアンドロイドは旅路でうつくしいものも、おぞましいものも見て、自我が急速に育っていく――それが人類を救う存在となる条件だったと知ったくだりの喜びはSFで得られる醍醐味かと。
残念だったのはシリアス色が強すぎることですかね。個人的に期待するロミオ節はエピローグみたいな内容です。フィリアの言動で軽くしようとしているのですが、ちょっと軽くなりきれませんでした。
や、逆にエピローグでようやく来てくれたのも読後感を良くする一因でありましたが、もっとああいう文章を楽しみたかったですのでー。
絵も良いですし、BGMも良し、エフェクトもそれなりに凝っていると、ゲームとしての作りもほぼ文句なし。
限定版の小説のままならねー感じもらしくて好きでしたし、割と必読かも。
以上。良い作品でした。ロミオシナリオのゲームがまだまだ世に出ることを祈っております。
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OHP-終のステラ | Key