虚構推理短編集 岩永琴子の密室 雑感

 一つ目一つ足のおひいさま・岩永琴子が妖怪や幽霊にまつわる謎を解決するミステリの短編集。
 相変わらず異常だけど論理の筋は通っているロジック寄りの変なミステリの良質な部分を存分に摂取することができました。
 なにせ今回もしょっぱなから飛ばしてきます。

「この事件の顚末が面白いと妖怪や幽霊の間で噂になったんです。そこで壁をすり抜けられたり、わずかな隙間からでも室内に入れる妖怪や幽霊が、密室殺人現場を発見すると中からロックを外して開き、その状態を知った犯人がどんな反応をするかこっそりうかがう、といういたずらが流行るようになりまして」
 (城平京.虚構推理短編集 岩永琴子の密室(講談社タイガ)(p.18))

 練られた殺人計画を幽霊や妖怪がいたずらでだいなしにするってなんぞやと首をひねる真実をぬけぬけと押し出してくるのです。
 そのせい犯人は気は気ではなく、それはそれで変な殺人現場が生まれしまっている、さあどうやって怪異を用いずに世を落ち着ける妥当な答えを捻り出すのか――いやあこういうの大好きというミステリでした。
 あるいはお好み焼き屋の店主はなんで恋人を迎えに来た青年に対して妙に攻撃だったのかとか、狸に化かされたいい話の真実のしょうもなさとか、50年間黒いベールをかぶり続けた祖母の隠された顔とはとか、どれもこれも解決しながらすっきりしないけど論理としては通っていてむしろ綺麗なので納得せざるを得ない読後感はこの作者ならではでした。

 以上。

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