1942年モスクワの農村がドイツ兵に襲われ虐殺された。唯一生き残った少女・セラフィマは助けにきた女性兵士によって狙撃兵として鍛えられ、女性のみの狙撃兵小隊に属し過酷な戦場を巡ることになる。彼女はかつてのドイツ兵へ復讐を遂げられるのか――
女性スナイパーを主人公とした戦争小説の長編。
出版されてからあっという間に人気となり、直木賞候補になったり本屋大賞取ったりと賞レースでも話題となっていた作品です。しばらく積ん読していたのですが、今回ようやく手を付けて読み終わりました。
非常にリーダビリティが高い小説でした。
心優しい少女が狙撃兵として成長し死に慣れていき殺人がスコアになっていくと辛い戦場のシーンが続くのですが、それでも時には揺らいだり疑問を持ちそうになったり失いそうになっても根本に根付く人としての尊厳を忘れないからこそ、暗く陥りきらずに読み進めることができました。
人としての尊厳の顕し方――表題にもあるのですが折に触れて問いかけられます。敵とはなにか、と。なにを大事にして、なにを打倒する対象とするのかと。
もちろん喫緊ではドイツ兵、そして故郷を失う原因となったドイツの狙撃兵なのは確かです。しかしそれだけではなく、殺し殺され、敵も味方もの数多の死体を見て、戦場の狂乱をみて、彼女が最後に撃つのはなにか――。
物語のクライマックスまで目を離せず、彼女の最後の選択にいたるカタルシスはすさまじかったですね。
あとここでそういう百合をかますのかと、最後の最後で爆発する絆の強さに膝を思いっきり打ちました。
いやー、あれはにこにこしますよ、ええ。
以上。諸手を挙げて傑作というわけではないですが良い小説でした。
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