葛城無門は柳龍光に挑むため"ゆうえんち"を目指す――
夢枕獏による刃牙シリーズの外伝小説。
"あの"夢枕獏で、"あの"バキのコラボレーションということで、実にこってりとした格闘小説でした。
最初から最後まで饒舌に、男が自分の技をふるって前に立つ男を打倒していくバトルロワイアルが語られ続けられるのです。
まず葛城無門という少年がいて、少年がどのような奴で――愚地克巳の兄であり、なおかつ――、どうして柳龍光に相対しなくてはならなくなったのか、を語り。
葛城無門がなぜ強いのか、どう強くなったのか、どこまで強くなっていくのか、を語り。
ついには怖い輩が集まる"ゆうえんち"に、強くて剛い男たちを集め、ひたすら闘わせる。
世の中で価値があるとされているものを、どれだけ捨ててきたか。
時に、それは、哀しみの量を比べあうことになる。
どちらが、どれだけの哀しみを負ってきたか。
どうだ、龍金剛、おまえは何に耐えてきた。
何を捨ててきた。
いいんだ。
それは、口にしなくていいことだ。
これから、おれたちは、それをいやというほど語りあうんだからな。
(小説 ゆうえんち -バキ外伝- 4(少年チャンピオン・ノベルズ)(p.275-277))
ページをめくるたびに、よくぞここまでと練り上げた技がひらめき、よくぞここまでと作りこまれた体がうねり、負ける姿が想像つかない男が敗れていくのです。
やりすぎなぐらいのあまりにも漫画的なシメを含め、これぞ夢枕獏の小説だと、たまりませんでした。
以上。きちんと(――うーん、たぶんきちんと?)完結していることもあり、夢枕獏の格闘小説を知るのにある種うってつけの小説となっていました。
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<同作者作品感想>
大江戸恐竜伝 1-6 感想