魔眼の匣の殺人 雑感

 真雁地区において班目機関による超能力の研究がされていた旧施設は<魔眼の匣>と呼ばれていた。そこに手伝いと共に住むサキミは決して外さない予知能力を有しているとされる。サキミが「真雁で男女が二人ずつ四人死ぬ」と予言した期日近くに、<魔眼の匣>へ9人が集う。果たして予言は真実となるのか――。

 という長編ミステリ。『屍人荘の殺人』に続く剣崎比留子シリーズの第2作となっています。
 『屍人荘の殺人』は特殊状況下でのクローズドサークルおよびトリックで話題になったのですが、本作も"予言"を取り上げ負けず劣らずの異常なシチュエーションを作り出していました。
 期日と被害者の数および性別が制限されている、という異常さ。
 それだからこそ次に誰が殺されうるのか推理でき、そして予言が真か疑いながらも殺されないための対策がより強度高く練られます。

 では、ここで問題だ。
 女性陣の中で確実に比留子さんに生き残ってもらうためには、どうすればいい?
  (今村昌弘.魔眼の匣の殺人屍人荘の殺人シリーズ(創元推理文庫)(pp.310-311))

 異常に対するロジカルな対峙を貫いて生死を問うていくサスペンスな展開――これぞ本格ミステリとして楽しめる内容になっていました。

 それにしても異常なものを自明とするロジック・トリックは取り扱い注意なのですが、2作続いて快作をかっ飛ばしており、北山猛邦さんとか城平京さんに近いカテゴリに入れる信頼を持つことにします。今後の活躍に大いに期待。


 以上。楽しく読める秀作でした。

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