カジノが合法化された日本において、10年前に電脳ポーカーで荒稼ぎした学生がいた伝説からポーカーが異様に流行る中学校が舞台。
物語は転校生が訪れてから動き始める。
敵は10年無敗の最強のポーカークラブ。
彼らを打倒するため、転校生ははぐれものたちを集めていく――。
というポーカーを扱った珍しいジュブナイルノベル。
面白いという評判で手に取ったのですが、予想以上に面白かったです。
ポーカーという競技の奥深さ。
二つ名を持つ強敵たち。
尖った能力を持ち、ぼっちだった仲間たちとの絆。
運のみに身を任せず、計算に計算を重ね、金をそして己の尊厳を賭ける勝負のひととき。
青さと熱さをテンション高めの文章で書き連ねる熱量。
読んでいて、わくわくが止まりませんでした。
例えば好きなシーンの一つ。
仲間が集まり切り、克服する方法を脳を絞り切って身に着け、とうとう最強に挑戦するの極めの場面。
挑 戦 状
発 ポーカーモンスターズ 江頭妙子、浦原甚助、柳雪友、赤村誠、小此木祐
宛 明浜撲克俱楽部 樫野明殿、月森らら殿、坂井優作殿、黒崎悠真殿、吉富慎造殿
来たる秋期公式団体戦「納涼お月見杯」にて決戦を申し込む。
王座戦にて貴殿らの首を頂戴し、我々がこの学校の王者である事を証明する次第である。
以 上
静かに呼吸を整えて、「挑戦状」の三文字を見つめる。
隣でぎゃーぎゃーうるさい悠木の声も、いつの間にか近寄ってきた新聞部の取材の声も、周囲を取り囲む生徒のざわめきも、外から聞こえる夏の蟬時雨も、今は耳に入らない。
不思議なくらいに、心が躍った。
(スクールポーカーウォーズ2(ジャンプジェイブックスDIGITAL)(Kindleの位置No.91-103))
こんな段落が多々あるのだから、読むのを止められないのも致し方ないかと。
その他もひっくるめ、文章や雰囲気は『イリヤの空、UFOの夏』の学園の陽性パートに近い――という最大限の賛辞を送りたくなるぐらい。
それぐらい好きな要素が詰まっていました。
以上。巻擱く能わずの快作でした。後書きを読む限り、時間をかければかけるだけ面白くなるタイプなのであるならば、じっくりと今後も続編を書いていって欲しいです。
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