コロロギ岳から木星トロヤへ 雑感

 2014年2月の北アルプスに位置するココロロギ岳の山頂観測所と、2231年2月の木星前方トロヤ群のとある惑星に打ち捨てられた宇宙船とが、時間を自由に移動する細長い生物が偶々"引っかかった"ことによって繋がってしまう。
 このままではその生物が地球を壊してしまうため、打ち捨てられた宇宙船に迷い込んだ少年2人に、彼らがまだ影も形もない217年前の2014年からどうにかコンタクトを取らないとといけなくなる――


 変えようとする2014年と変えられる2231年とを交互に語り、徐々に望む結末に向かっていく様を書く時空改変SFの小品。
 良い意味で軽いノリで時間を改変していき、ガンガンと進んでいきます。迷う暇があまりないこともありますが、困ったら取りあえず最低限考えてから行動が先行します。
 ――2世紀先の、別の惑星の、宇宙船内に、どうやってメッセージを届けるのか。
 それはそれで面白いネタに拘泥しませんし、『やりとり』が成立する条件もいつのまにか整っていたりします。
 その話が進むスピードは、2231年の少年たちに設定されたタイムリミットがどんどん近づいていく緊迫感の中で過去から変えられていく現在のシチュエーションを駆使して宇宙船内を切り開いていくサスペンスと良い具合にマッチしていました。
 全体的に、さっと読めて楽しめるSFだったのではないでしょうか。


 なお主人公格の女性天文学者腐女子趣味で、助けてくれる他の天文学者とちょくちょくアホな腐会話を挟むのは好き好きでしょう。無くても成立しますが、あるからといってSF小説としての質を損なうわけではありません。フレーバーとしてはありなのではないかと。

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