なないろリンカネーション 雑感

 主人公が相続した亡くなった祖父の一軒家には鬼と座敷童が住んでいた。彼は家と共に彷徨う霊の救済のお役目を祖父から引き継ぎ、怪異な事件に関わっていく――


 と言った感じに始まるオカルト物のオーソドックスなADV。
 ジャンルが"涙あり笑いありのホームコメディADV"とあるとおり、おおよそがコメディのノリです。序盤に出会う怪異は深刻なものではなく、増えていく鬼たちや同居人との一軒家での生活と言う落ち物系の展開およびヒロインらとの恋愛とが繰り広げられ、居心地の良い空間に浸れます。またお役目の目的は霊の救済であり討伐でないことが強調され、語りと探りによる打開ばかりで突飛なアクションは控えられていました。物語に良い意味で抑制が利いていて、穏やかな日常物の延長線上となっていたと思います。
 上記のように日常物として作品を上手に確立し、物語のクライマックスを迎えるのですが、山場においてプレイヤはがつんとやられます。数々のばらばらに見えた怪異な事件が一つの大事件へと収束し、明らかになる悪意と、その解決で生まれる更なる苦難。ここでのままならなさ/どうしようもなさは本当に辛いものがありました。
 ただ中盤までとうって変わった暗い展開は唐突でも不自然でもなく、それまでの積み重ねの上に待ち受けていたものであったという自覚も同時に得るため、理不尽さは全く感じませんでした。なので物語全体をコントロールするシナリオライタの手付きはかなり冴えていたんじゃないかなと評価します。
 悲喜交々を楽しめる良いシナリオでした。
 短所になりうるのは大筋が一本道なことでしょうが、まあそこはそれ。


 キャラクタは皆良し。
 ヒロインでエンドがあるのは4名、犬系の人懐っこい妹キャラ・琴莉、自然解消した元カノ・由美、怪異事件担当の刑事・梓、座敷童の伊予。
 由美はかいがいしさとか気を抜いた時に見える眼鏡姿とか清楚に見えての意外なエロへの積極性とか良かったですし、梓の社会人としての先輩としての在り方は好感度が高かったですし、琴莉も彼女なしでは物語が立ちいかないメインヒロインとしての存在感がありました。
 ただ一番好みだったのは誰かと言えば、伊予かと。
 出色の出来の――ロリババァでした。何百年も生きた座敷童であり、「なんじゃ」「よかろう」など偉そうな言葉遣いをし、一歩引いた立ち位置で主人公らが困った時に助言をするメンター的な役割を果たします。しかし超然としているだけではなく、所々で地の優しさを覗かせます。口調が変わり発揮されるその優しさの甘さは物凄いものがありました。
 
 オンとオフがはっきりしているようで混在している、姉さん女房のような在り方に魅せられました。


 絵はレベルが高く、肉感的で好みでした。
 エロも良かったかなと。


 以上。総じてレベルが高い優秀な作品でした。

  • Link

 OHP-シルキーズプラス


なないろリンカネーション
シルキーズプラス(WASABI) (2014-09-26)