報酬は高額ではあるけれども失踪しても死んでも不問にされる異常な案件である裏バイト。訳アリの女性2人・黒嶺ユメと白浜和美は裏バイトで稼ぎながら、恐ろしいものたちに遭っていく――
というホラー漫画。
基本的にホラーは苦手なのですが、面白いという感想をTLなどそこかしこで見たので致し方なく手に取ってみました。
読んだ感想としては、うん、面白いーーとなるでしょうか。確かに怖いのですが、失神したり目をそらしてもう二度と読みたくないほど恐ろしくはなく、ホラー苦手な私としてもエンタメ系のホラーとしての面白さを享受出来ました。
裏バイトの内容が変わるごとに舞台はリセットされる連作短編形式で、内容は人形や怨霊あるいはモンスターや怖い家といった直球ネタから、おおいなるものや海に棲むものを扱ったコズミック系、そして理不尽系など、千差万別です。縦軸では主人公2人の家族の謎があり、横軸でそういった単発のホラーが繰り広げられます。
毎回金のために積極的に異常なものに関わらないといかず、そしてバイトの達成要素をクリアしながら自らの命を守るにはどうすればいいか――という鬩ぎあいが起き、それがホラーとしても、エンターテイメントとしても面白くなっていました
オーソドックスなネタも、近づいてくるこわいもののぎりぎりのラインをどこまで攻めて、そしてどう逃げるかが新鮮でした。それにはたまた逃げられなかったけど生き延びた場合の恐ろしさもまた格別で。
あと社会にかなりまずいことが起きていて本当にそれで終わっていいの・・・??という終わり方が結構あるのですが、その座りのそれはそれでホラーのオチの醍醐味として良かったですね。
絵は正直粗いです。人間の表情の描き分けがよくわからなかったりしますし、怖がらせているのかなんなのかシュールでよくわからない絵になっている場合もちょこちょこあります。
それは良し悪しで、通して読むとなんだったんだろうあのコマに描かれていたのは――という引っ掛かりが理解不能なストーリーと理解不能なクリーチャーといったホラー要素の良い塩梅の味変になっていました。
ここからは好きな話を挙げてみるのですが、個人的には理不尽系のネタが大層好みでした。コズミック系もかなり作品世界に溶け込んでセンスのある内容になっていて好きですし、出てくるとわくわくするのですが、ホラーとしては理不尽系に票を上げたいところ。
よくわからないルールが押し付けられてよくわからない結果が返ってきて、間違えると死ぬ――という理不尽。そのシチュエーション設定は間違えるとストーリー展開に都合が良くなりすぎて興ざめなのですが、本作はかなりの打率を誇っていました。
まず4巻収録の「空地探し」。
空地を探して写真を撮るうちにこの町はなにかがおかしいと気づく――
5巻収録の「駅員バイト」。
ある筈のないホームで任される仕事とは――
9巻収録の「軍手落とし」。
さりげなく軍手を落とし、落とした軍手は拾われてはならない、なぜそんなことを――
現段階ではこのエピソードがいっちゃん好きです。わけのわからなさここに極まれりと、理不尽な面白さが詰まっていました。
以上。面白くて怖い、楽しめるホラーでした。お薦め。
- Link