霧が村を覆う時、おおかみが村人に紛れ込む。
おおかみは一晩に一人殺す。
村人らはおおかみに対抗するために宴を開いて一日に一人くくる。
おおかみが勝つか、ひとが勝つか。
主人公は何度もループしながら、その黄泉忌みの宴からの生き残りを目指す――
と言う感じで、人狼ゲームをノベルゲームに落とし込んだADV。
ループで人狼ゲームを打破せよ──『レイジングループ』 - 基本読書の記事を読んで興味が湧いたので、Switch版をプレイしてみました。
そして感嘆しました。
いやはや、非常に面白い。
まずもって人狼ゲームとしての面白さがきちんと発揮されていました。
人々が役割を振られ、その立ち位置の目的のために相応しい振る舞いをなす。
より多数の支持者を集め、より適切に殺す、正しい言動同士のつばぜり合い。
主人公がループで異なる行動をとることで配役が変わり、立ち位置がずらされることで、がらっと変わるそれぞれの正しさと行動。
緊迫し殺伐としたサスペンスの妙味を存分に味わえました。
そこに、時間を繰り返して必要な鍵を集めながら、誰がおおかみなのか、どうすれば勝てるのか、行動を最適化するループ物としての趣向が上手く嵌りこんでいました。
その上で次第に、何故そのようなルールなのか――という世界そのものの情報が蓄積され、どのようにちゃぶ台をひっくり返すかという方に主眼が置かれていきます。
意外だけれども、腑に落ちるし、理が美しい真相を用意してくれたのは嬉しい限り。
またちゃぶ台返しとして、科学もオカルトもルールがある以上は如何様にも活かせるしちょろまかせられるという思考の元で主人公が正しいとする解答に向けて全ての要素が分解され並べていく手付の鮮やさは見事でした。
ただなんというか、その見事にルールの解明と世界の再構築を成し遂げさせやがった主人公が最高にイカれてるのが、この作品の極めて大きな特色かと。
だが、勘違いするな、房石陽明。
お前は別に、正義の味方でも何でもない。
力も無ければ信念も無い、ただの……
ただの、好き者だ。
面白いことに目が無く、猫を殺す好奇心を抑えきれない。
頭が抜群に切れ、弁論は神をも操る口巧者の成れの果て。
――全くもう、どこに出しても恥ずかしくないサイコパスが主人公だったりします。
ADVとしては彼の行動を選択肢として選ぶのですが、どうしてその彼にとっては正しさ極まりない理屈で動けてしまうのか、最後まで慣れることはないでしょう。
それはそれで新鮮なプレイ体験でした。
ところどころで発揮される独特なユーモアも好きでしたし、全体的にシナリオに関しては満足度が高いです。
これ以上細かい所に踏み込んでも興ざめなので、未プレイの方は是非プレイをお薦めします。
なお音声が悪い意味でヤバイのですが、まあ我慢我慢。
以上。快作でした。ケムコの他のADVがコンシューマに移植しないのであればアプリを買っちゃおうかなと思います。
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- 蛇足
本編を終わらせた後に出てくるエクストラシナリオのとある一編で割と素直に驚愕しました。
いや、まさか、おお、そうだったのか!!
や、言われて見たらそうとしか見えないのですが、言われるまで気づきませんでした。完敗です。