D.C.II Fall in Love 感想

 DC2PSから攻略ヒロインに昇格した茜、麻耶、まゆき、エリカ、まひるアイシアをメインにしたファンディスクです。DC2シリーズのファイナルファンディスクとされているらしく(一応)、本作にDC2PC本編とDC2SCを含めた入学・卒業パックが出されています。
 されているのですが、ここでさっくりネタバレをかますと、本作内で主人公・義之たちの学年の卒業式が行われる訳では有りません。題名の“fall”に意味が含まれているように、ほとんどのストーリーは年代は違えど秋季、特に秋季文化祭を舞台にしています。その点に大いなる不満を抱いたのですが取りあえずは置いておきましょう。コンテンツごとに感想を述べていきます。

  • あふた〜すと〜り〜ず

 基本的には本編後のらぶらぶいちゃいちゃを描いています。茜、麻耶、まゆき、エリカ、まひるアイシアの6人分有ります。
 一つのイベントに絡めてヒロインと恋人になった他愛ない日常が過ぎていくため、いつものDCの延長線上にあります。文章は特徴がなくごく普通で、雰囲気まったり、起伏がそれほどなくて、無茶苦茶な面白さを発揮する訳でもないのですが、そこには一人のヒロインとの生活がある、それで万事OKとそういう感じ。
 その為、目的とされているらぶらぶいちゃいちゃだけはどのシナリオもきちんと完備されています。どれもこれもちくちくと愛情を確かめ合う甘ったるい会話が繰り広げられ、暑苦しいぐらいに暇があったら手と手、腕と腕、腕と胸、唇と唇などが触れ合います。好きなヒロインがいれば重々楽しめるでしょう。
 

 DCシリーズにシナリオの出来などと言う無粋なことを言いたくないのですが、言ってしまうと出来が良かったのは茜シナリオとまひるシナリオです。
 茜シナリオは展開が巧みでした。本編により重く意味付けされた風景を楽しくて他愛のない日常で一変させ、そして他愛も無く楽しく過ぎ去った日常が重い意味を持つようになります。その変換がさらっと描かれていて、感心しました。
 まひるシナリオ。まひるに関しては箸が転んでも感動してしまうぐらいであり、何を描かれても諸手を上げてしまいます。それでも本編の再演――他人に彼女と紹介し、一緒に遊ぶ、そんな些細な再会/再開に感動しない訳がありません。そして親しかった――もとい今なお想い合っている親友と彼氏と3人での交友と、親友の変わらぬ心のままの成長を見て過ぎた時間の差の理解と、親との再会。やがてくる選択の重さを含めて、D.C.II To Youをプレイしていないと完全には味わえないのが玉に瑕ですが、それでも豊かな短編でした。
 逆に出来が良くなかったのはアイシアシナリオで、さくらさんの使い方に著しく不満を覚えましたが、まあ個人的な思い入れなのでパス。


 エロは欲しい衣装でありますので満足でした。


  • 風見学園演劇部〜秋公演〜

 DC2SCと同じように、秋季文化祭の映画をキャラクタ達が撮ったという設定で、それぞれのヒロインの特性をベースにしたハチャメチャなパラレルストーリーになっています。当然ながら茜、麻耶、まゆき、エリカの4名のみのシナリオが有ります。
 ハチャメチャと言ったようにそれぞれの内容は、雪山遭難の末にたどり着いた屋敷で起こるサスペンス『朝焼け色の雪』、人とロボットとの関係を問う重いもの『その日、ロボットは夢を見た』、繰り返される時間の中でいかにして元の時間に戻るために駆け巡るラブコメディ『失恋タイムマシン』、単純明快な怪盗物『怪盗プリンセス・雪月花を狙え』と多種多様です。
 『朝焼け色の雪』は茜をメインに据えた映画。これは素直にプレイしてたら、ひっくり返されました。それが伏線かあと爽快でしたね。
 『その日、ロボットは夢を見た』は麻耶をメインにした映画。時系列は近未来に持ってかれていて、人とロボットとの関係を考えるとこのような社会になるかもしれないけれど、あなたはどう考え、どう行動しますかと問いかける内容になっています。実はプレイ前はめっちゃ期待していました。DC2SCの美夏アフターで麻耶がロボットの体を作り、義之(主人公)が心を作る、そんな未来があると良いと人とロボットが通じ合う美しいシーンがあり、またロボットの存在が何故かシリーズを経るごとに大きくなっているため、ifとしてどのような物を見せてくれるのかと考えていたからです。
 実の所マイナスに物語は進んでいき、また色々と残念な出来のシナリオでした。しかし学生が問いかけた物としては及第点であると前向きに受け取りました。何よりifであり、実際の未来ではないですしね。
 『失恋タイムマシン』はまゆきをメインにした映画。記憶のないまま起きた義之が水越先生から現状と条件を伝えられ奔走するのですが、よくあるループネタをいい具合にDC世界に写していました。質が高く、非常に面白かったです。
 『怪盗プリンセス』はエリカをメインにした映画。他愛ないですが楽屋裏ネタにくすぐられました。なお無理ですが、あそこでエロが欲しかった……

 
 そんな訳で全体的に見るとDC2SCでもそうでしたが、無心に楽しめるストーリーばかりでした。お話のレベルが跳ね上がっていると言っても過言ではないでしょう。

  • アルティメットバトル!

 『春風のアルティメットバトル!』『薫風のアルティメットバトル!』『秋風のアルティメットバトル!』『恋のアルティメットバトル!』『恋のアルティメットバトル 延長戦! in 朝倉家』の5本。春風と薫風はDC2SCで収録されているのと同じで、今回はOPとEDだけ差し替えてそのまま再録されています。前回のDC2SCまではプレストーリーという位置付けであり、秋風も本編前の時系列にあります。恋は恐らくは誰もクリアしていない本編後になっています。
 『秋風』は音姫が生徒会長になる直前の文化祭のお話で、雪月花に対向するために誰をミスコンに立てるかという筋です。『薫風』で片鱗を見せていた当時の生徒会長の暴走ぶりを楽しめます(?)。後、さくらさんがさくらさんで癒されました(??)。またカーテンコールのメタネタがディープで笑えました。
 『恋』は普通にミスコンです。全10ヒロインが走りながら計算したり、料理対決やったり、衣装を御披露目したりする定番ネタです。
 『延長戦』が取りあえずのフィナーレとなっています。CDCDで繰り広げられた音姫と由夢との義之の取り合いに答えがでます。どう選択しようと3Pという心地よい夢は見ることが出来ません。エロ的にも残念なことです。
 途中の義之の心中/幼い頃の決心はまひるアフターと同様にD.C.II To Youを経過していないと重さを掴みにくいのが難点ですが、それでも貫き通している現在においてどちらかを選ばなくてはならない選択の意味を知るには充分だったと思います。また傷つくのは確実で、でも傷ついて切れる仲ではない彼らの答えはどうあろうと正しい、とも。
 まあ、基本的にはいちゃいちゃしやがってこいつらでいいのですがねー

  • 総括

 以上、DC2の世界をまだまだ味わえた楽しい延長戦でした。DC2ファンは100%買っているでしょうが、本編よりもお薦めなので是非。


 ただ心残りなのは、卒業と言われる割に終わりの盛り上がりがなかったことでしょうか。そうした明確な区切りがないのはらしいと言ってしまえば、らしいのですが。
 最大の個人的な焦点はDCPK、DC2SCの感想でさんざんわめいているのですが、DCPK、DC2SCと募ったさくらさんの不在の解決に有りました。が、どうもDC2をメインにした時間軸上では解決されないまま卒業されてしまったようです。製作予定のDC0できちんと解決されるのを心から願っています。
 後出来れば水越先生ルートが見たいし……etcと言っておくと切りがありませんね。閑話休題


 本作で取りあえずはダ・カーポ2はピリオドのようです。今まで楽しまさせていただきありがとうございました。今後もDC世界は続くようなので、付いて行ける内は付いて行きます。

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 DC2シリーズ感想
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