私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!  1-13 雑感

 最近、百合作品の一つとして本作品が挙げられるようになっていました。しかし1巻が出た時の印象ではぼっちネタを少女でやった変な作品で読んでみたけど合わなかったなーというものであり、そこから大きく外れていて、首を大いに捻ってしまいました。ただどこかの感想ブログで地獄のような百合だとかなんだという評を目にし、amazonでえらい平均星数が高いことから、これはひょっとしてひょっとするかも、と期待度が上がっていきました。
 それで今回我慢ならず、最新巻まで大人買いしてしまい、しかも読んでしまいました。


 序盤は若干……いや、結構……正直言えばかなりしんどかったです。
 黒木智子というぼっちでコミュ障の少女を主人公とした数々のストーリーは記憶以上に辛い。笑いと言うよりも唇の端が引き攣るだけと言うか、弟の願書を出しそびれたとか洒落にならねーという話も挟まり、これはあかんのではないかと悪い意味でドキドキしました。
 それでも、親からもらったお金の使い方はきちんとしていたり、さぼるのも学校のルールには気を使って逃げたり、先生や学校の命令に反感するも逆らわず、親友は親友として立てて彼女なりに友達は大事にしたり、要領が悪くて中途半端に嘘のつけないパーソナリティの部分に捨てきれないものがありました。
 何より、憶えがない訳でもありません。
 救われたい、救われたい、救われたい。――何度か繰り返される、その渇望に。努力せよ、自分を変えよという真っ当なカウンターが待っているのもものともせずに言い放つ、その夜郎自大な想いに。


 風向きは、8巻からの修学旅行編で変わっていきます。
 黒木智子はグループの外れ者と余り者で構成された班に当然のように属することになります。
 そこで彼女は相も変わらず、要領が悪くて、飾り気がなくて、自分を隠せない言動を挙動不審な態度で繰り返します。
 学校生活と、いつもと違うところは、その触れ合う時間がほんの少し長いこと。
 ちょっと不審に思われてでもどうでもいいと流される筈が、回数が数回だけでも重なることで、否応なしに黒木がどんな人間なのか想像を走らせることになります。
 ――ああ、表裏なく、馬鹿なんだ、と。


 それは或いは他のクラスメイトよりも隣に多く座っていった少女が気づいていたことで。
 

 修学旅行が終わり、1年間が過ぎようとしたときに、黒木の周りにはいつしか近しい人が――本人視点では勝手に――増えていました。
 リア充グループに属し密かに声優を目指している少女、内輪以外には塩対応の無愛想な少女、黒木の一挙一動をキモいキモい言いながら目を話さない平凡な少女、etc、etc。
 少女らは黒木の虚飾も余裕もない姿を鏡とし、自分を受け入れてほしいと強く強く願いを籠めて集ってしまっています。その矢印は強すぎて、他者とは共有できない独占の色が濃く、重なってしまえば争うしかありません。。
 その火花が散らされる真ん中で、好き勝手やっていただけの陰気な少女は状況を理解しないまま、割とのほほんとしています。
  (11巻、P8)
 いや、凄い絵面です。
 なるほどこれが地獄めいた百合なんだ、と。
 どうして、いつの間にこうなったという違和感がぬぐえません。
 物凄いテコ入れに真っ青です。
 ただ嫌かと言えば――読者としてはそりゃ全くそんなことはありません。
 何せ、黒木と同じクラスになったことを喜ぶ少女が、同じクラスになれなかったことを泣きわめく少女がいる。1巻からしてみれば驚愕の奇跡は、クズな彼女をクズとして通しながら真っ当に得た恩恵で、これまで読んできた甲斐があったというものです。


 さて。
 最終的にどうなるのか、例えば再度全てを無くしてしまうのか、どうかはわかりません。
 ただ最後まで付き合っていきたいなと思います。


 以上。なるほど、百合でした。評判を信じて良かったです。

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