キラ☆キラ

  • 感想

 始めにやった樫原ルートは遺書以外に見るべきところがない普通の青春物だったのでどうなるかとひやひやしました。加えて次にいった千絵ルートの主人公が泣いた瞬間以外がいまいちだったので、戦々恐々としました。しかし2つのきらりルートが逆転満塁ホームランというか、本筋で、存分に瀬戸口成分を堪能できました。単なる爽やか青春物ではない作品を期待していた身としては満足しました。
 

 まず瀬戸口作品では荒廃した人間の(大体は遺した)言葉が1回は出てきます。本作では樫原の父親の遺書、千絵の父親の言葉があたります。物理的にも・精神的にも完全なる関係性の断絶があるからこそ実に気持ち悪い上に、今までは出しっぱなしで終わらせたため消化不良にも程がある読後感でした。また個人的には今まで見た中でも1、2を争うシナリオであったきらり死亡ルートで覚醒にいたるまでの主人公のモノローグも延長線上にあるものでした。CARNIVALでもSWANSONGでも主人公のモノローグであるからこそ隠し事が一切ない思考回路は理性的とさえ言えるのに根本的に相容れないものとなっていて、強制的に他人の感情に沿わされるようで揺さぶられます。以上の変態的内容を味わったからこそ、私は悶絶して、はまったのですが。
 しかしこの作品にはライターが今まで書いてきた断絶の先へと進むものでした。千絵ルートで千絵はこう言います。


 私が本当に欲しいモノってね、絶対手に入らないような気がするの。


 主人公はその後に泣き、憑き物が落ちます。そしてきらり死亡ルートではこのような劇的な言葉さえ無く、ある日見た夢によって世界に自分が生きていることを無理矢理に覚醒させられます。実のところプロセス自体は大したことはないのですが、無駄に修飾がない筆致によって胸にずしんと来ました。
 ただしこのような評価をしてしまうからこそ、本当の例外である他者による救済であったきらり生存ルートを評価することが出来ないのでしょうが。


 さて絶望も覚醒もお手のままの実力を持つことが明らかとなった今、次に何をするのか非常に楽しみにしています。 

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