- 感想
――おまえの、おまえだけの世界を与えてやろう
ある願望を抱いて以来、常に無気力だった少年がその言葉とともに“時間停止能力”を得た。その能力は彼の願望を叶えるのにうってつけのものだった――
という出だし。そしてその願望は女性を凌辱することだったというわけで、凌辱物に流れていきます。嫌がろうが泣きわめこうが好き勝手するタイプなので好みが分かれるでしょうが、時間停止・部分解除を用いて行われる日常と隣り合わせで行われる凌辱描写は優秀でした。
絵はどちらかと言えばデフォルメの強い可愛い系ですがレベルは高く、特に強気の顔とそこからの転落はエッジが立っていました。
……と、そういったシーンに満ちた普通の凌辱物ならそれはそれで大歓迎なのですが、本作の特異な点はそれ以外のシナリオにありました。
まず文章はぶつぎりで巧みではないのですが、一貫した理性と論理があり、淡々と連ねられると妙に印象的でした。描写される主人公の思考回路は一つの衝動以外は緻密かつ計算高く働き、読んでいて爽快でした。
ヒロインの動きも単調ではなく、諦めたり、反抗したり、策を練ったりと、堕ちる最後の最後まで彼女らの方法に則って行動します。
個人的には現在の主人公を嫌いぬいている麻耶佳ルートが気に入りました。強気少女を不自然の力で翻弄するエロシーンはぴったりと嗜好に合いましたし、反抗する様子も鮮烈でした。千枚通しは序の口で、様々なパターンで主人公を殺害しようと挑戦してきます。何と言うか、膣に薬は空前絶後ではなかろーか。
ただ残念ながら完成度に問題があります。量ではなく質的にそういった凌辱以外のウェートが大きく、物の見事に美しい着地をする割に、筋書きを連ねるだけで全く書き込まれずあっさりと流されます。そのためプレイしていて乗り切れません。
能力に関する謎解きはCROSSCHANNELの名前を出すまでもなく手垢塗れで、最大の謎は明かさないというあんまりな内容で、凌辱物のどうでもいいトンデモ設定と言えなくもありません。
けれども、垣間見えるシナリオライタの力量を鑑みると、“もしも細部が書き込まれていたら”、という他愛もないifが無視できない魅力を放っています。麻耶佳ルートを筆頭に凌辱シーンにおいてさえ伏線が置かれているのをみると、完成した時に何らかの融合がなされえたのかもしれないと妄想が止まりません。
ユーザーの勝手な言葉と判っていますが、改めて思うに、勿体ない作品でした。
攻略は難解なので、詰まったら素直に攻略サイトにお世話になった方が早いと思います。
システムは普通。シナリオジャンプがあるのは攻略の性質上便利でした。
以上。ぐだぐだ述べてきた事を抜きにしても、凌辱物として優秀です。ただエロ目的だとフルプライスは若干割高に感じるかもしれません。
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