日々是平坦 1 雑感

 同じ高校を舞台に、清いカップルを描く「純粋男女交際」と6人の男女の馬鹿騒ぎを書いた「日々是平坦」の2編を収録した中編集。
 大変素晴らしかったというか、ツボにはまったので感想を書いてみました。

  • 純粋男女交際

 高校生のフェチズムを描いた名作「謎の彼女X 2巻」の後書きで植芝理一さんはこう述べられていました。

 恋愛漫画としての『謎の彼女X』の主人公が一七歳であるのには、理由があります。たとえば、お互いに秘かに好意を持っている男女が、なんらかの事情により一晩、同じ部屋で二人っきりで過ごすことになったとします。この二人が大学生であったら、おそらく一緒に寝る、SEXしてしまうと思います。この2人が中学生であったら(いまどきの中学生の常識では違うかもしれませんが)、おそらく、しない。というか、僕個人の考えとしては、まあ、まだ中学生なんだし、しなくていいじゃないかと思います。じゃあ、この二人が高校生、一七歳くらいの少年と少女だとしたら、僕はどう思うかというと――。


するかもしれないし、しないかもしれない。
   (謎の彼女X 2、P194 )

 個人的にはこの文章を読んだ時に膝をぽんと叩いたものです。少なくとも日本の高校生を主人公とし、そのもやもやっとした男女の成長のあわいの機微こそがエロスの生まれるところなのだと。
 以降、何故か私の心に強く刻まれた言葉になっています。
 そして、若々しい体を持って、直接的な性行為の前で、ぐるぐると悩む。――そういった作品を探し続けていたりもしました。


 ここでようよう本作に戻るのですが、この漫画というか、この中編「純粋男女交際」はまさしく、追い求めてきた逸品と言っても過言ではない、清廉エロ爆裂加減でした。


  (P10-11)


 かーーーーっ。殴る壁が見当たらん、というのは兎も角。
 真面目で可愛い山下さんと、真面目で堅物の村野くんの付き合い始めて仲良くなる経過を描いています。
 好きなひとと付き合っているという精神的な充足ももちろん大事です。学校に行けば/明日になれば好きな人に会える、会えない時も想う――というひたむきな形は綺麗でした。
 しかしまあ個人的に着目してしまうのはやっぱり肉体的な面ですし、本中編はそちらをかなりしっかりと「好きなひとと触れ合いたい」ということを描いています。
 少女と少年共に恐る恐る相手の反応を伺いながらも、それでもやはり触りたいという願いに抗えず、ちょっとだけ暴走する。
 その欲求の表出が実にいいんですよ、これが。
 例えば最初に引用した画像だったり、例えば少女のリクエストだったり。


  (P39)


 いやね、相手の反応をうかがうといっても、清廉な2人の相手への欲求は、お互い嫌がることなんてありえなかった――という話で。
 自分で暴走して、自分で勝手に恥ずかしがって、ふるふるしてしまうというのがお約束。
 こうして、純情で清い少女と少年が若い体の欲に震える様をいかようにも堪能しました。満足、実に満足です。

  • 日々是平坦

 こちらはうって変わって6人の男女の馬鹿な日常を描いています。
 昼飯を工夫しようとして余計な問題しか起こさない奴を筆頭に、同じクラスにいる二つのグループを上手く描いた良い群像劇となっていました。
 爆笑するようなネタも、何気なく過ぎていく時間も、すべてが「クラス」で過ごしていくという並列なのが青春でした。
 毛色の違う面々が偶々同じクラスになって、何の利害関係もなしに仲が良くなる――というのは学生の特権かと。
 これはこれで好物の一品でした。


 以上。お気に入りの一冊になりました。1とナンバリングされているので、今後の続編にちょう期待しています。

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