『ほうかごがかり』に指名された二森啓は毎週金曜日の夜、小学校に喚ばれることになる。闇に包まれた学校で「何か」の世話をしなければならない。失敗すれば――
メルヘン作家を自称する甲田学人氏によるホラー小説の新シリーズ。
そもそも好きな作家さんなのですが、本作は掴みがこれまで以上に抜群に上手くて、あれよあれよとのめりこむように読んでしまいました。
いつの間にか黒板に書かれていた「ほうかごがかり」という文字で任命され、
その夜、真夜中の自室で寝ていたら、学校のチャイムが鳴り響き、校内放送が始まり、
襖を開ければそこは学校の屋上で、誰もいない筈の後ろから突き飛ばされて――
目を向けた。見ると、フェンスに紙が貼ってあった。
緑のフェンスに、白い紙が。おそらくは破いたノートの紙。
張り紙は屋上を吹いている風が当たって、はためいていた。
啓は張り紙に近づく。この状況に少しでも説明が、情報が欲しかったのだ。
張り紙の前に立って、張り紙を見た。
『いる』
ただ一言、そう書いてあった。
明らかな子供の字。
(甲田学人.ほうかごがかり(電撃文庫)(p.34).株式会社KADOKAWA)
不自然に、流れるように、異界へと連れ去られる導入は見事でした。
そして集められてしまった5名の小学生の『ほうかごがかり』の役目が知らされ、『何か』わからない怪異の世話をすることとなり、
それからはもう、ぞくぞくと怖いことと、あとはそう――とっても痛いことが起きていきます。
それでも非力な小学生が、怪異に対抗する手段がないわけではなくて、観察し、考察し、記録することで、鎮められえると。
小学生なりに、あるいは小学生の範疇を超えた能力で、怖いものを必死に記録しようとしていくのですが、ただそれはまた怪異に近づくことで、その過程でまた恐ろしいことが――
言ってしまえばSCP×七不思議×小学生。
こういうのを面白がる民にとっては慈雨のような作品でありました。
以上。期待の新シリーズ。この後もしっかりと続刊が出て、作者が望む結末を迎えますように。
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