20年前、ヨハネスブルクにUFOが現れ、異星人がそのまま居つくことになった。以来、町にスラムを作って暮らしてきたが、異星人は"エビ"と呼ばれ、住民たちの対異星人の感情は悪化するばかりであった。頂点に達しようとした時、ヨハネスブルクから離れた地区に異星人を移住させる計画が大企業・MNUに託される――
事後のインタビュー形式と録画映像形式を交えたある種のドキュメンタリーのような構図となっています。評判を聞いていた限りでは地球人と異星人間の折衝をする内容を想像していたのですが、結構違いました。そもそもヨハネスブルクを舞台にするいやらしさからして、そんな単純なものではなく、異星人への差別が基本のテーマとなっていました。
No 異星人のマークや諸々の熾烈な人体実験、不平等な取引などといった判りやすい表出から、態度からにじみ出る徹底的に下に見下げる鈍感さまで、影に日向に異星人は差別されます。種族差からくるソレを移住計画責任者に振りかかったとある事件を通して生々しく描くことで、差別の状況の根深さ、どうしようもなさ、愚かさ、もしくは刹那で現れ得る――気高さを見せつけます。
そして見せつけるだけで終わります。それらの状況は何も齎しません。流石に差別が悪いレベルの話にはならないにせよ、ハートウォーミングなんてもってのほか、他種族間の一つの結末さえも示す気なんてさらさら無いように見えます。
宙ぶらりんで戸惑うのですが、一つのフックとして、エピローグでジャーナリストが“これから起こりうること”を挙げていくシーンが重要だと取りました。種族の未来に関してはその種族がおっかなびっくりするしかない――というような当たり前の答えの一つとして。
このように本作はきちんとシチュエーションモデルを走らせえたSFでした。
……と述べてきたのですが、堅苦しさ一辺倒の作りではありません。ノリはどうしようもなくスプラッタでした。ポン、ポンッと肉は弾けて、血は飛び散り、余裕でミンチと化します。
直接的なグロではないのですが、いやーな気分になる効果は十分でした。
以上。簡単にまとめればB級SFになってしまいそうな内容ですが、B級らしいチープさだけではない面白さがあった気がします。個人的には見返すことはないと思いますが。
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