ULTRAMAN 1 感想

 早田進次朗は生まれつき異常な身体能力を有していた。子供の頃に3階から転落しても怪我一つ追わず、高校生になると高層ビルを飛び移ることが可能になった。彼の父親の名前はハヤタ・シン。かつて"ウルトラマンだった男"。進次朗は受け継いだ能力故に異星人との戦いに巻き込まれていく――


 という感じの内容。鉄のラインバレル――よりも、あの仮面ライダー異聞"Hybrid Insector"を描いたコンビだからこその、妙味と格好良さが存分に味わえるコミックでした。


 何よりも大事なこととして、"ウルトラマン"の続きとして本当に格好良かった。
 ストーリー展開の妙とも言えますが、この物語の時代設定はウルトラマンが地球を去ってから数十年後であり、科学特捜隊は解体されて防衛省へと吸収されています。ウルトラマンと異星人との戦いは遠い昔に行われた御伽噺程度でしかありません。その、もう終わった伝説/"ウルトラマン"を『今ここ』に掘り起こし、語り直していきます。蛇足になりかねない骨格を、きちんと伝説の新たな再演として成り立たせていました。
 それはウルトラマンらしさを説明できない物として安易に再現せず、ちょっと捻ることで新しい物語のガジェットとして再燃させ得たために成し遂げられていました。
 具体的に言うと、1巻内では敵は怪獣などのどでかいサイズでは無く、人体の大きさの範囲で戦闘が起こるのですが、そのヒトの大きさの範囲でウルトラマン的な物がきっちりと詰め込まれていました。ウルトラマン的な物とは何かは議論があるでしょうが、変身・怪力・スペシウムあたりは必ず出てくるに違い有りません。
 変身――勿論、あります。ただし徹頭徹尾、人造のですが。ハヤテのものたちは、もはや光の巨人が宿ってない以上、ウルトラマンのスーツを身にまとうことで、ウルトラマンになります。これがまず格好良い。

 私がウルトラマン
   (P120)

 ウルトラマンスーツを身にまとい、こう宣言することで、ウルトラマンはそこに存在するのです。この在りように無理がないのは本当に原作の強度がある強みでしょう。
 そして怪力。ヘリに人間を投げ上げる力を怪力と以外呼ばないでしょう。戦闘の前に、まずウルトラマンの力を持ちいて、屈指の名シーンを演出していました。
   
 最後に、スペシウム。危機に陥ったときに、助言されます。

 進次朗クン!
 右手首の制御ユニットを左手首のコネクタに接続するんだ!!

 結果として取るポーズは両腕で作る十字。――出す技の名前は決まり切っていました。
 ここまでされては次に何がどう出てくるのかわくわくせずにはいられません。・・・・・・そう思ってしまう時点で、見事に嵌まっていると言ってしまって過言では無いのですが。


 またサスペンスとしても一級品になるポテンシャルがありました。『"ウルトラマン"がハヤタ・シンに宿っていた時代に何があったのか』という大テーゼが設定されているのです。この謎に基づき、ハヤタはウルトラマンではなくなり、異星人が再び攻撃してきて、科学特捜隊は力を蓄えてきたようです。これから謎が増えていきながら、徐々に真相を明らかにしていくのでしょう。この謎により駆動される物語/サスペンスを描く手つきは"Hybrid Insector"で折り紙付きなのですが、現段階ではしっかりとコントロールされた浦沢直樹風という理想的なステップを踏んでいます。近い話では次巻の予告で諸星が出てきたり、諸星と言えばの"あの巨人"が影で出てきますし、わくわくする展開が待っていそうです。本当に続きが楽しみです。


 以上。文句なしに面白いです。お薦め。

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