ハクメイとミコチ 1-8 雑感

 森の中に住む小人や獣・虫たちの何気ない日常を描くファンタジー漫画。
 買うだけ買って読んでいなかったのですが、読み始めると嵌りに嵌り、一気に読み進めてしまいました。

 2人の小人・ハクメイとミコチをメインにしているのですが、徐々に森の住人たちの生活に話の輪が広がっていきます。基本的にはちょっといい人情話が多いのですが、酒を飲むだけだったり、服を買うだけたったりする日や、本当に何もない休日も取り上げ、ゆったりとした時間に同じように浸れる空気が流れていました。
 人間から見ればサイズが小さいのですが、この住人からすれば広い世界を普通に活用して生活する。それが本当に楽しそうで、楽しそうで。

 例えば住居。木の洞を加工した家や、部屋が積み木状に積みあがり治安の良い九龍城めいた一角だったり、卵の殻が床屋だったりと、住民たちが彼らの視線で住んだり通ったり迷ったりする風景を描き込んでくれるだけでもう眼福の一言。

 [:w400](6巻、No77)

 竹を半分に切ったのが2人が並んで入れる露天風呂に様変わりするくだりとか本当にわくわくしたものです。

 (4巻、No127)

 あるいは食。食べ物の描写が巧みな作品はその時点で好感度が上がるのですが、本シリーズはもう折に触れては酒を飲み、肴を食べ、珈琲を嗜み、甘味を味わいます。焼けて飛び跳ねる貝、じゅうじゅう煮える茸、湯気を立てるスープ――何度その料理を一緒に食べたいと思ったことか。

 (7巻、No111)

 そして最後に、そういった世界を背景にして映されるハクメイとミコチの2人の関係もまた甘美でした。ふとした縁で同居している彼女たちですが、それぞれの特技と立ち位置がある独立した者同士であり、その2人の住居におさまるまでは全く別個の人生を歩んできました。しかし今ここで共に食べて、飲んで、笑って、偶には冒険して、寂しい時は一緒にいて、一人になりたい時は一人にして、同じ生活時間を過ごす――その在り方は上手く言葉にならないのですが正にベストカップルであり、それを貫いているのは凄いなあと感心しきりでした。


 以上。良いシリーズでした。今後も新刊を追っていきます。

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