かつての文明は崩壊し人類の生存圏が狭まった未来。スラム街の少年・アキラはハンターとして生きるべく第一歩として旧世界の遺跡へと赴く。命からがらたどり着いたアキラは廃墟に不釣り合いにたたずむ裸の美女・アルファと出会う。アキラにしか知覚できない彼女に導かれてハンターとして成長していく――
ポストアポカリプスを舞台にした冒険活劇。
非常に明快かつ爽快で、こういうのが好きという人間には堪らない逸品でした。
少年がいて、得体が知れないけどとびっきりの美女に鍛えられる。
血反吐吐きながら加速度的に強くなっていき、彼をバカにしていたなにもかもが見返されていき、畏怖の目を向けていく。
否応なしに英雄にさせられていく、彼をそうさせようと望む存在のままに。
そういう物語を読みたいと願う輩にとっては、その少年度合いの純度が高すぎて歓喜するしかありませんでした。
少年が肉体的にも精神的にも荒野をはいずっていくのを観る愉悦とも言い換えられるでしょうか。
そうだ、お前は自覚も自信もないけれども強いのだ、と強くなっていくのだ、と。何故そうさせられるのか分からない恐怖など想像する暇などなく、少年が傷つきながらかくあれかしと彫り上げられていく不格好な有様のなんと美しいことか。
「……俺、そんなハンターになれるのかな?」
それに対して、アルファが自信満々な態度で答える。
『なれるわ。何しろアキラには私のサポートが有るのだからね。少なくともアキラの意志以外は、私が誓って絶対に何とかするわ。意志とかやる気とか覚悟とか、そういうもの以外はね。流石にそれだけはアキラに頑張ってもらわないと、私にはどうしようもないわ』
アキラはしばらく黙っていたが、やがて強い覚悟をはっきりと表情に出した。
「分かった。意志とやる気と覚悟は、俺が何とかする」
アルファはとても嬉しそうに、満足げに笑った。その笑顔はアキラの覚悟を称える為のものであり、アキラの意志を自身の思い通りに誘導できたことへの評価でもあった。
(ナフセ;わいっしゅ.リビルドワールドI〈上〉 誘う亡霊(電撃の新文芸)(p.71))
覚悟は俺の担当だと虚勢をはり、ついには虚勢でなくなり、愛そうとした少女も生きるためには手をかけられてしまう。
そうして、少年は次第に少年でなくなっていく。
そんな彼が期待された運命の訪れた時に予定調和を壊せるようになるのか――実に楽しみでは、ありませんか。
そういうメインテーマの修飾として、ギャング団同士の抗争、商売の発展、あるいは憩いとしての風呂とか食事描写とか、ロボ同士のど派手な戦闘とか、エンタメ的なおかずは十分すぎるぐらいに盛られていきます。
ほんと読むのが楽しい小説でした。
以上。繰り返しますがこういうの大好きという快作。webは未読ですが大幅に変わっているようですし、続巻を楽しみにしています。
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