BALDRSKY Dive1"LostMemory" 感想

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 待望のバルドシリーズ完全新作。2部作にしたせいでなんやかんや言われましたが(私も文句をたれましたが)、あにはからんや素晴らしい出来でした。
 

 まず肝であるゲームパートは複雑過ぎず単純過ぎない練られた2.5次元ロボACTであり、有難い事にシリーズを通して変わらないスタンスを維持しています。近距離・遠距離武装を集めつつ、クリアするだけ、コンボ重視etc目的に応じたプレイが出来る幅があります。極めればポイントなどのリターンもありますし、細かい所まで順位や数値が出るのでモチベーションも保てます。
 なおバルドフォースからの最大の変更点はヒートゲージの扱いでしょう。前作まではヒートゲージは硬直時間・体力回復量以外には攻略性に寄与していませんでした。しかし今作でヒートゲージ対応武器が設けられたおかげで更にフィニッシュワークの重要性が上がりました。これは良い改定だったと思います。
 

 シナリオについて。基本はサイバーパンク・ハードボイルド。一時的な記憶喪失となった主人公が過去を探りつつ、敵を追うという手垢まみれの筋書きです。しかし仮想空間でシュミクラムを操るというゲーム性とこの上もなく調和している世界観であるのは確かです。なおかつ模倣体、特異点、AIの魂に満ちた海辺といったSFジャーゴンの置き方がさりげなく巧みで、SFマインドをくすぐられました。
 クリアできるキャラは3名。バルドフォースと同じようにルート毎で主人公の立場は大きく変わります。変わるたびに別の視点からの解釈があり、情報が増え、更なる謎も増えるというように、物語に何とも言えぬ陰影を与えています。
 最初はバルドフォースのゲンハのような魅力的な悪役はいないなあと不満だったのですが、進めていく内にそうでもないと判りました。弱みを突く正しい言葉、矛盾をしながら敵対者を導こうとする倫理、教義に沿った破滅的な行動、そして何よりもエキセントリック! 敵として現われながら、究極的には敵にも味方にもならず、直接戦わないで終わったからこそ、思いが募るというもので。そんな訳でアンチテーゼであり、ジンテーゼであるグレゴリー神父の造形は成功していたでしょう。
 物語の筋の感想は完結してからで。


 システムはADVの戯画システムは良質ですし、ゲームパートと連動してカスタマイズ出来ますし、文句なし。
 音楽。OP歌はバルドっぽいというぐらいの印象です。
 絵はそれなり、エロは陵辱がちょいちょいありますが、バルドフォースよりえぐくはありません。回収するのは面倒かもしれません。


 以上。あらゆる意味でバルドフォースをアップデートした作品(要はエロゲACTの最高峰)になりそう。
 そしてまた全ての始まりの人物は何を考えていたのか、増えるダイスの数の意味は何か、過去に如月寮で何があったか、先生は何故正気と狂気を彷徨っていたのかetc、明かされなかった謎はたくさんあり、Dive2が待ちきれません。

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 OHP-戯画