おとなりの奥様は今日も独り 雑感

 在宅勤務を行う主人公の部屋の隣に新山夫妻が引っ越してきた。しかしすぐに夫は長期出張となり、妻の秋穂だけが残された。秋穂に横恋慕した主人公は彼女を落とそうと行動していく――

 1人のヒロインを只管攻略していくSLG
 シチュエーションに淫するのが同人ゲームの強みの一つと思っているのですが、本作は「隣に住む人妻を寝取る」ことに特化した作品としてかなり優秀でした。
 
 寝取るための行動は大きく分けて3段階に分かれているのですが、その分け方がふるっています。

 その一、親密度を稼ぐパート。秋穂の朝~夜にかけての1週間の行動パターンを彼女の言動から推測し実際に追い掛け回して蓄積し、出会う回数を増やし会話を重ねていくと親密度が上がっていきます。まあ立派なストーカーなのですが、親密度が上がっていくと徐々に会話のレパートリーが変わっていき、秋穂の性格の良さが判っていくので主人公の一目惚れが正しかったと時間をかけて再認識していく助走として上手く働いていました。

 その二、身体接触を重ねて性欲を上げていくパート。最初は肩もみのマッサージから始まり、背中、デコルテと進み、嫌がられるラインと快感のラインを見極めながらちょこちょことマッサージ以外の接触をして徐々に人妻の解消されない性欲を上げていきます。そして体が燃え上がったところで、”秋穂”の方から裸になり性的な行為を迫るようになります。
 このこれまでの行動が実を結んで妄想が成就した達成感はなんとも言えないものがありました。そして最初は「挿れないで」と言いながら、回数を重ねると「ゴム有りなら」と段階を踏んでいくのも開発するというか、人妻が絆されていく過程としていいねぇという感じ。

 そしてその三――作品の大きな山として、親密度と性欲を落とさないようにするパートが訪れます。
 このパートがあったからこそ、自分のツボに嵌った作品となったと言っても過言ではありません。
 ”親密度と性欲を落とさない"の意味するところですが、親密度と性欲とがある程度以上に上がると長期出張から旦那が帰ってきて簡単には稼げなくなり放置すると止めどなく下がっていくのです。ある数値以下になると攻略失敗となります。これまで大っぴらに不貞行為をしてきたのですが、今度はきちんと――変な言い方ですが――旦那の眼を盗まないといけません。
 例えば、旦那が隣にいる時間にメールを送り、旦那を躱して会える時間を聞くとか、

 朝のゴミ出しの時にエレベーター内でキスするとか、旦那に作る夕飯の材料を買うスーパーにわざわざ会いに行くとか、こっすいスリルが実に良いんですよ、これが。後はそう、夜寝る前のちょっとした時間に隣から来させて逢瀬を交わし、抑えきれない罪悪感と共に隣の部屋に戻るのを見送るシチュとかほんと判った作りでした。

 いずれのパートでも大事になるのは秋穂の主人公に対する心理になるのですが、決して長くはない文章で些細な日常の変化をつけるのが非常に巧みでした。
 最初はスーパーですれ違っても挨拶だけが、買い物帰りに並んで歩くようになり、ご飯に誘われるようになり、食事の内容にバリエーションがついていく――並べて言うのは簡単ですがよくこれだけの文章で抑揚をつけられるなと感嘆する差分だったと思います。
 その手腕は性行為の積み重ねでも存分に発揮されますし、攻略対象が一人のSLGは同じ行動が必然的に多くなるのですが、変化が来る楽しみを上手く魅せることで周回のモチベーションは高く保たれました。


 まあぶっちゃけちょっと、うーん、それなりに面倒くさいのは確かです。
 でもその面倒くささにこそ楽しさが宿っているのでシチュエーション特化型として良く出来ているんじゃないかなとお薦めしたいところ。


 なお絵はサンプルとか見て思う所はあるかもしれませんが、そのマイナス点もゲームの楽しさが勝るので、最初は多めに見て欲しい。
 それに繰り返し見ると味が出てきたり、出てこなかったりしますので大丈夫大丈夫。


 以上。方向性が作品の形としてきちんと昇華した良作でした。合う合わないは分かれそうですが、合えばぞっこん嵌るかと。

  • Link(リンク先18禁)