うちのメイドは不定形 感想

 南極大陸にいる父親から送られてきたのは直径80cm、厚み20cm、40kgはありそうな「なにか」の塊で、お湯につけて3分待つことと指示された。従って、風呂の湯につけ3分待つと、「なにか」はお姉さんっぽいメイドさんとなった。形容し難い彼女は略称《テケリさん》と名乗って、変身する、要するにクトゥルフ的な存在だった――


 という冒頭。ジャンルは落ち物系で、家にクトゥルフ的に不定形なメイドさん・テケリさんがやってきて、その世界知らずによって問題が巻き起こるというコズミック・コメディです。
 掴みはOKのまま、メイドで不定形のテケリさんの可愛らしさ、愛らしさ、有能さを余す所なく書いていています。何時の間にやら髪が蠢いたり、手が増えたり、指がナイフになったり、分裂したり(この分裂した分身テケリさんの可愛らしさを思い知るべき)して、メイドの仕事を完璧に熟します。そして主人公のことを何時も大事に思いやり、第一に考えます。でも主人公の学校生活のを知ることが出来るチャンスがきたり、初めてお客様を迎えるとなると時めいて、居ても立ってもいられずに後先考えずに行動します。
 もうあまりの愛くるしさに、読んでいて心の平衡を保ち得ませんでした。この深遠なる感情を現代日本語で言うと萌えとなるでしょうか。おお、窓の向こうにテケリさんの髪が! おお!


 もとい。
 原案者はクトゥルフ神話研究家なので、クトゥルフらしさは出ていた。設定はもとより、所々の形容や手記などのあるある的な道具を用いたギャグ、異なる視点の段落を挿入する時の雰囲気などなど。それらをライトノベルの型に上手く流し込んで、コズミックホラーに合流していたと判断したい。


 以上。非才ながらあざとくなりすぎない感じにデコってみました。
 そんなこんなでクトゥルフ・コメディとして面白かったです。続編を是非書いて欲しいですねー。

  • Link

 

うちのメイドは不定形
静川 龍宗
PHP研究所
売り上げランキング: 132