イマコシステム 感想

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 局所的に話題になっているように見えたので買ってみました。リバーシブルのカバーとなっていて、小冊子が付いてくると、出版社も力を入れているようです。
 収録されているのは『カーテン』『アスペルガァ』の短編2編と、イマコさんシリーズ7編に、イマコさんの書き下ろし1編です。


 まず本作のエロ描写の特徴について。美少女の絵は可愛く巧みです。赤面ともの凄い眼力でヒロインの顔を歪め、汗や涙などなどの溢れ出る汁と荒い息遣いを用いて、性行為の荒々しさと快感を表現しています。体つきはヒロインに依存するため何とも言えませんが、良い貧乳を描いています。絵に強い特徴があるわけではないのですが、個人的には性的に興奮する上手さがあると思います。
 あと匂いを重視していて、朝会ったクラスメイトに顔の近くで匂いをかがれて朝フェラに気づかれたり、性行為後に教室の入ってきて匂いで気付かれて知らない振りをされるとか、絵だけでは気付かない保管をして性的な行為を作中で強めていました。
 本作のエロ描写の最大の特徴はヒロインの内面描写がかなり多い点にありました。性行為最中に心中で喋り詰めであり、どのコマでも心中の台詞枠があります。
 このことで性行為の相手が主人公格の場合は主人公のことを考えまくられることになり、ヒロインの主人公への想いが如実に判ります。その為に主人公がヒロインに対して性行為を行う意志/好意/興奮の答え合わせがされ、主人公の印象を強めていましたし、主人公への感情移入した際の性的な興奮を増すようになっていました。
 性行為の対象が主人公でない場合はシンプルです。良いNTRエロになっていました。

  
 それでは個別の感想を。
 『カーテン』は学生時代3Pしていた同級生と同じ会社に勤めているのだけれども話しかけにくいのだがどうしたら――という内容。
 学生時代の3P描写は実に楽しそうでした。3人とも同意の上でやることを話し合い、他の学生の前でやっていたらと妄想することで刺激を得て、液が飛び散る体力任せの性行為であり、それでいて仄かな恋愛感情が垣間見えます。そうした性行為が楽しそうであり、幸せそうであるからこそ、今の会社勤めの不自然さがストレスだと伝わりました。伝わったからこそ解消された証――涙は彼ら以外には理解不能なものでありながら、泣く行為自体には拒絶されませんでした。本当に最後はエロマンガドラマツルギー的にはほとんどありえないにも近いのですが、それでもあえて泣かせたかった心理描写を成り立たせた性行為とも捉えられ、作者の性質が並ではない印象を受けました。エロくて心に残る秀作です。


 『アスペルガァ』は魅力的になった幼馴染みを縛り付けて強姦しようとする少年の話。幼馴染みの心中を常に描写することで、ヤッテいく内に嫌がって毒づく最初から、性行為に慣れ、快感を得ると変わっていく様子がまざまざと判ります。快感に殻が溶けて言葉が意味をなさなくなる心中の経時変化ろ同時に、台詞枠がぐらつくと言うように目で判る変化もつけ、絶頂に至る流れは興奮しました。
 またビジュアル的には絶頂後の、

 おい
 …縄 ほどけよ
  (P50)

 と言うジト目が魅力的でした。
 それからの会話は無思慮だった少年への報いということで。陳腐ではありますがセリフ回しは秀逸でした。
 なお本作における最大の問題は題名でしょう。込められた意味は何なんでしょうかね。


 『イマコさんシリーズ』。本作の中心となっていて白眉でもある連作です。異母兄妹のイチナとイマコが結ばれる物語――とまとめてしまえば簡単なのですが、純愛あり、NTRあり、薬物・洗脳あり、乱交ありと様々な要素が詰められています。話が進んでいくたびに後付のように時系列と人間関係が交錯してそれなりに複雑なのですが、まずイマコさんが兎に角可愛いことを強調しておきます。低身長貧乳、黒髪黒眼鏡、ツンだけど淫乱と3拍子揃っています。
 始めはそんなイマコさんがイチナにベタベタに溶けて幸せなエロが続くのですが、薬物でNTRれ、あっさりとイマコさんは快楽に落ちていきます。NTRはイマコの心の穴を埋めるものでもあり、お弁当の取り合いしたり、フェラしながら、

タツキ「そういや今日日曜なのにお前の両親いないのか?」
タツキ「ま おかげでよろしくやれてるけどさ」
イマコ「…どうせあいつら今頃どっかのラブホだよ」
イマコ「私と顔合わせる気なんてないんだよ」
タツキ「ふーん じゃわりと寂しかったり?」
  (P153)

 でイマコが“かあああっ”と赤面したり、イチナを放っておいてラブコメします。この落差と快楽に落ちる様子が実にエロくて、大変お世話になりました。


 が、細部に違和感が積み重なっていることを誰が知ろう――


 驚いたことに、そこからとんでも無いどんでん返しが来ます。イチナくんがびくびく震えながら、超勘違いして、初めて主体的に動くことで今までのお話が全て吹っ飛び、ひっくり返ります。上に上げたP153の会話もそういうことねとなり、うん、まあ良かったね、ということで閉幕となります。
 あっけに取られましたが、こういうのもありでしょう。……NTRエロ的にはもっと落ちて欲しかったという本音もありますが。


 小冊子。リバーシブルの裏側の小道具がたくさん使われている絵の生成過程と後書きが収録されています。特に後書きは興味深いものでした。眼鏡を描く時は毎回写真を撮るとか、“「一つのキャラに全部やらせる」エロ漫画”を作ろうとしたとか、製作過程の試行錯誤が面白かったです。


 以上。良いエロ漫画でした。次回作では“イマコさんの寝取られ展開を楽しめた方向け”の“「萌えとエロの両立」”を目指すそうなので、またまた期待できそうです。

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 『イマコさんシリーズ』の時系列を簡単にまとめてみました。完全にネタバレですのでご注意ください。