ファイアーエムブレム 風花雪月 感想

 フォドラの大地はアドラステア帝国・ファーガス神聖王国・レスター諸侯同盟の3か国が分割し危うい均衡を保っていた。それぞれの次代を担う人材はフォドラの中心部にあるガルグ=マク大修道院士官学校で教育を受けていた。士官学校に主人公が教師として働くようになった時から歴史が再度動き出す――


 シリーズ16作目となるシミュレーションRPG
 3つの国のいずれかの学級の担任になるかを選択し、最強の学級を決定するグロンダーズ鷲獅子戦を頂点とする学園生活を送る第1部、3か国が入り乱れ嘗ての学友が主たる将として殺し合う戦争編の第2部を戦い抜いていくことになります。
 経験を積んで自らの指導能力を伸ばしながら、生徒たちの武技・魔術・指揮・移動能力を個人の特性と将来の兵種と学級のバランスを見越して成長させ、実戦でレベルアップさせる――を繰り返すのが基本的なゲームプレイ。
 プレイする前は学園FEねえとやや斜に構えていましたが、杞憂も杞憂、頭硬いのもいいところ。
 もう、めっさ嵌まりました。
 主人公女固定で3ルート・すべて百合エンドで123時間を費やしました。
 
 SRPGの実戦の戦闘パートはシリーズで既にほぼ完成を見られているいつものでしたが、キャラ・シナリオ・システムなどなど全てをひっくるめたゲーム世界での生の魅せ方が極めて巧み。
 結果として半端なく強く感情移入させられました。

 まず教師として、誰を――どの国を第一にして導いていくのか、最初に決めねばなりません。
 そして、それぞれの国の目標は平和的に融合することがなく、達成するためには戦争の勝者になる必要があります。
 アドラステア帝国――皇女・エーデルガルトを選べば、彼女の覇道のためフォドラを武力で統一へ。
 ファーガス神聖王国――王子・ディミトリを選べば、彼の復讐に囚われた道から戻るのを助けつつ元の秩序を取り戻すことに。
 レスター諸侯同盟――盟主の嫡子・クロードを選べば、フォドラの外との関わりをも考えた新たなる未来を築いていきます。
 それぞれの学級には最低限8人程は付き従うキャラいて、彼らもまた担任になった自キャラと教導と戦闘を通して絆を強くしていき、先生と慕うようになってくれます。

 つまり自明ですが、ある周では味方だったキャラが、別の周では敵対することになります。


 そしてFEでは当たり前のようにネームドキャラもHP0になれば死に、蘇ることはありません。
 味方でも、敵でも。
 作戦指示で下手を打てば教え子を無為に死なせますし、敵対した教え子には断末魔の叫びをもたらすことになります。
 
 これが、プレイしていて本当に辛い。
 教え子が教え子を殺すのを避けるために、主人公/先生で教え子を極力斃すようにしていましたが、敵対する前まで慕われたり、或いは前の周で笑い合い、いっそ伴侶として添い遂げることを誓った人々を斃していくのは心にくるものがありました。
 スカウトである程度敵対するのを避けることが出来るのですが、その敵対した姿と断末魔の台詞によって、そのキャラクタの立つ度合いが強くなってより愛着が増すというおっそろしい愛憎の機微もあるので、見ないのも勿体ないのが、えい、もうと身勝手に憤慨さえしてしまいます。
 そこらへんの学園編でのスカウトするかどうかは、実に悩ましく、あるいはロールプレイとして感情に色を乗せて言ってしまえば楽しいと思う取捨でした。
 味方にすれば何より殺さなくて済みますし、しかも他学級のキャラ同士の相性が思わぬ向上を見せることでエンド後に思わぬ未来に着地するのを見ることが出来ます。お前とお前がくっついたのか!(イングリッドとラファエルとか)とか、それともうんうん順当なカップルだなとか頷いたり、恣意的に多彩で明るい未来を引き寄せることが出来るのは――教師冥利につきる未来の決定権かと。
 でも、敵対すればより歯応えのある戦闘になりますし、極限でのやりとりで見える人間性もまた一興なんですよねえ。
 
 何はともあれ、それぞれのルートでの学園・戦時下の生活だけでも面白いのに、交差する感情の類まれなる莫大さによってちょっと信じられないぐらいゲーム世界へと嵌り込んだという訳で。
 とんでもないゲームを作りだしてくれたなあと製作者への感謝の念で一杯です。


 さて、まだまだ全然この作品に関して語り尽くせていません。
 それぞれのキャラ・シナリオ、あるいはBGMに関しても言いたいことが多過ぎます。
 しかしキリがないので、メインヒロインたるエーデルガルトに関して最後に触れてこの雑文を終わりたい。


 ――エーデルガルト=フォン=フレスベルグ
 皇女にして、未来の皇帝。
 エーデルガルトと共に在ることを選択した帝国ルートでも、結局は彼女と敵対することを選んだその他のルートでも抜群の存在感を放ちました。
 単体で美しく、格好良く、可愛く、綺麗でと造形だけでも見事。
 ただ彼女が主人公/先生(師と書いてせんせいと呼ばせる呼称の素晴らしさよ!)どう思っているかを帝国ルートのエーデルガルトエンドで知ってしまうのがプレイヤの運のつき。敵対した時の内面に思いを馳せた時に走る心痛はちょっと尋常じゃありません。
 まだ王国ルートはマシです。ディミトリくんが殴られ役になってくれます。
 同盟ルートはダメです。ほんと、あれはダメ。

 

 この旗を掲げられて攻め込まれる、彼女の想いは言葉に出来るものでは、ないでしょう。
 エーデルガルトの在り方を生み出しただけでも、この作品は一生残るものとなりました。


 以上。繰り返しますが素晴らしいゲームでした。
 キャラエンドは兎も角、エンド後の後日談コンプするのは流石に無理がありますし、全てを網羅した公式設定資料集は是非是非出版して欲しいですねー

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