日本SF短篇50 II 感想まとめ

日本SF短編50 ??購入link
日本SF短編50 ??所収「メシメリ街道」読了。0。恋人の家に婚約するために向かうが、今まではなかった決して渡れない道が出現していた。何とか渡るために街を歩き回るが・・・。という感じの不条理小説。不条理としてよく出来てるけど、まあそれだけ。好みではなかったlink
あと山野浩一傑作選は買わなくて良かったと思ったlink
三崎亜記好きには合う作家かなあlink
日本SF短編50 ??所収「名残の雪」読了。0。眉村卓作。雑誌社の守衛が遺した手記には驚くべき物語が記されていたーー。地の文の伏線が効いているタイムスリップ物の良作。戦国自衛隊の返歌としても正しい。link
出だしから守衛の武士っぽさを強調していながら、遺された手記は外来語が多かったとサラッと記される下りは見事だったlink
日本SF短編50 ??所収「折紙宇宙船の伝説」読了。+1。閉鎖的な村の共同娼婦は何時も紙飛行機を飛ばして、童謡を口ずさむ。そんな彼女に子供が生まれーー。/これはかなり面白かった。まずは人知れぬ村の共同娼婦という淫秘な風習と、一歩引いた所から見ると解る非自然さが語られるlink
井戸は枯れず 、娼婦は老いず、何処か時間がゆがんでいる。そして父親が誰とも知れぬ子どもが生まれてから、歌われる童謡の意味が明かされ、日本の閉鎖的な村に秘められた宇宙規模のバックボーンの一端が想像されるようになる。link
遂には何故村が閉じられているかにひっくり返り、子供の話ーー読心術を持って生まれた子供が何者かに呼ばれて村を出て行くという、これまでの先へと開かれて短編が終わる。全くもって見事な伝奇SFだった。超能力テーマとしては有数の作品かとlink
日本SF短編50 ?「ゴルディアスの結び目」読了。+1。小松左京作、再読。周囲に超自然現象を起こす精神疾患患者のエネルギーはどこから来るのか――。オカルトSFの古典的名作だった。心に絶望的な瑕を負った少女の中に潜入していく風景は今なお色鮮やかだった(ただし毒々しくlink
日本SF短編50 ??「大正三年十一月十六日」読了。-1。ヨコジュン押川春浪物の嚆矢。特に言うべきこともなく。そこそこlink
日本SF短編50 ??所収「ねこひきのオルオラネ」読了。0。夢枕獏作品。雪の降る日、酒を飲む青猫を連れた老人に出会ったーー。猫を使って音楽を奏でるという、在るかも知れないし無いかも知れない奇蹟を現実とも夢ともつかない筆致で書いた佳作。猫ファンタジーとして見事link
日本SF短編50 ?所収「妖精が舞う」読了。+1。神林長平雪風シリーズ第1作。『戦闘妖精・雪風』になるにあたって大幅に修正されたので、初出の形で収録されるのはこれが34年ぶりの事らしい。デビュー後1作で、こういうSFに深い爪痕を残す歴史的名作を書けるのかと感心してしまったlink
内容は一見は味方機に見えるアンノウンを倒した零/雪風が裁判にかけられるエピソード。『FOEではなかったが、FRIENDでもなかった。ということは敵だ』『あなたは自身の目を信じておられるのですか。自分はIFFを信じます』という台詞群で想像が付くとおりの認識の決定法が繰り広げられるlink
同時にお偉いさんを迎えるのにアンドロイドを使えば良いというオフビートなギャグテイストの話が進行する。そこで僚友のブッカー少佐と会話が幾度となく披露されるのだけれども、アンブロークンアローまで恐らくはそれ以降でも重要となるだろうガジェットが出されていた。link
"返ってこないブーメラン"。ブッカー少佐が余暇に凝りに凝って作り上げた、戻り方を自分で判断する人工知能搭載ブーメランというギャグなのだけど、それは何度も何度も試験する度に次第に返り方が人間に予測できなくなる。それと対比して木から削り上げた返ってこないブーメランが上げられるlink
どちらが"雪風"か。それは多分まだ答えが出ていないんじゃないかな、と。それにしても神林的なキータームが詰め込まれた良作だった。雪風シリーズを読み返したくなったので困るlink
日本SF短編50 ?所収「百万光年ハネムーン」読了。-1。梶尾真治の作品。読み終わって、え、これカジシンの最高傑作の一つなの?とのけぞってしまった。そんな大したものではない気がする。エマノンとかクロノスジョウンターとかの方が良いのがあると思うのだけれども。link
それとも何時どんでん返しが来て奈落に突き落とされるのだろうかとwkwkしながら読んだ僕がすさんでいるのだろうか。スロー・ガラスネタの良い改変だと思うけど、そこまで出来は良くないと思うんだけどなあlink
題名が似ているイーガン「百万光年ダイアリー」は大好きlink
日本SF短編50 ?「ネプチューン」読了。0。新井素子作。チグリスとユーフラテス以来にこの作者の作品読んだけど、こういう文体だったなあと思い出した。擬音や素朴な表現を使いながらざっくりと登場人物の心理深くに切り込んで行くlink
最初は行動の説明なのだけど、話が進むうちに何時のまにか行動原理/心理が詳細を極めつつ理解を外れて行き、在らぬ行動を出力する。わかりやすいのに何でそうなったのかわからない無類の読感だった。link
ただし女性から読むと理解が容易いのかも知れない。女性心理と、女性心理をどうみられるのか冷静に見極めて書いている印象があるlink
SFとしては進化とか大ネタをかますけど、うん、そういうこともあるかなと。自覚的に処理されているけど、進化そのものよりも、それと合わせた人間原理への考え方が素晴らしかった。好みではないけど、いい出来なのではと思ったlink
日本SF短編50 ?「アルザスの天使猫」読了。+1。類稀な超能力と翼と、純粋で優しい性格を持つスノウ・マンはコンツェルンの超能力者に追われるーー。卑怯なまでに叙情的な、素晴らしい超能力SFだった。link
以上で日本SF短編50 ?読了。?から引き続き、作者と作品共にほぼ文句無しの選び方の、大変出来がいいアンソロジーだった。好みなのはアルザスの天使猫、妖精が舞う、折紙宇宙船の伝説、ゴルディアスの結び目の順。link