スパイダーマン:スパイダーバース 雑感

 世界を崩壊させうる現象を目論むヴィランの手により、この世界のスパイダーマンは死んだ。
 しかしその時既にとある少年が蜘蛛に噛まれ、新たなスパイダーマンになりうる超人となろうとしていた。少年はスパイダーマンを継いでなる決意のもと、別世界のスパイダーマンとともに世界を救おうとする―― 


 評判が良かったので、3/11に吹替版で観てきました。
 実はスパイダーマンの映画やアメコミはほとんど触れていないので、割と無謀な行為だったかもしれません。
 しかしトレンドや小ネタを全く知らない上でも、最高に楽しめました。
 クールで、お茶目で、vivid。これぞエンタメという感じ。


 まずヒーローの成長物として。
 親との関係や進路で悩む全く普通の少年がひょんなことから運命に選ばれる。異能を身に着け、世界を揺るがすトラブルに巻き込まれ、新たなる導き手と出会い鍛えられ、普通の人間の時のメンターとの敵対し離別し、ヒーロー/スパイダーマンとして目覚める――
 これよ、これと言うしかない王道の手続きを由緒正しく踏んでいきます。今的な速さで、軽口でシリアスをいなしながら。
 しかし悲劇の重力から逃げきれず、彼は打ちのめされようとします。失う辛さと、力が足りないことと、覚悟が足りないことに。


 ここでヒーロー/一人しかいない存在になる――という孤独な摂理が物語に効果的に響いていたのが上手いところでした。
 スパイダーマンは世界に1人しかいない。
 でも少年には先に立っていた理想のスパイダーマンが脳裏にあり、他の世界のスパイダーマンと出会えて共闘しえたのです。
 1人だけど1人じゃないと知った奇跡が、少年をヒーローへと導く力と還元される。
 いやあこれに震えて、感動しない筈がなく。


 映像は練りに練って作りこまれており絢爛。
 吹替の声は見事にマッチング。
 全ての要素が高レベルで好印象であり、言うことなし。


 なお色々と好きなシーンはありますが、マイルズが覚醒した時に一番上に置かれる雑誌の題名がスパイダーマンなのと、クライマックスでマイルズが操作盤まで行く経路が先代と同じ経路だったあたりが好きです。


 以上。傑作でした。もう一度劇場で観たいですね。

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