隣人がVTuberです VTuber黎明期に死に戻ったリーマン、大手事務所を作る 雑感

 ブラック会社に勤めていたが事故死して会社員は2018年に戻ってしまう。会社を辞めて引っ越したボロアパートの横には未来においてとんでもない軌跡を描くVtuberがたまたま住んでいた。ひょんなことから彼女とともにVtuber事務所を作り、Vtuber業界を独自路線でのし上がっていく――

 【書籍化発売中】告知事項(隣人がVtuberです)【第二部連載開始】 - ハーメルンの書籍化作品となります。
 個人的にはVtuberは詳しくありません。継続して追ったりとかしてませんし、最近の自分の知見を強いて言えばヴィヴィの関西弁可愛いなあとかそんなレベルです。
 ただWeb小説を読むのは趣味で、Vtuberモノが一ジャンルを築いているのはそれなりに承知しています。基本的にはVtuberのプレイヤーになる作品が多く、例えば「逆行転生したおじさん、性別も逆転したけどバーチャルYouTuberの親分をめざす!」(この作者の他の作品も含めて車輪の再開発系は面白いのでオススメ)や「美少女になってちやほやされて人生イージーモードで生きたい!」
(ハーメルンの特殊タグを使った初期の名作)が面白かったですね。逆に箱を作る系は珍しく、世知辛いのからのし上がっていく「輝きたくて - ハーメルン」とかが面白かった記憶があります。

 そして本作はプレイヤーではなく、箱を作る方のVtuberモノとなります。Web連載時点でかなり惚れこんで更新を心待ちにしていましたし、書き下ろし多めの書籍化が来てもう感謝カンゲキ雨アラモードといった具合。
 この小説の肝としては、主人公は未来を知っている、はずですが、――ただしその通りに常に本当になるかどうかはわからない、というあたりにあります。たしかにおおよそはその通りに動いてきましたし今後も動いてくようですが、他人の人生を巻き込んだり、とんでもない額のお金を左右する場合は、未来を知っているだけで信じて賭けられるか、と。
 ここで相方のVtuber/枚方カノンが利いていて、口が軽くてポロリが多く人見知りで、未来では会社の金を横領してホストに貢いだド級のアホ――だが100万人登録に至ったトップクラスのVtuberになる未来を持つ彼女。その彼女の隣に引っ越してしまい、見捨てられぬとご飯を奢ったのがきっと運の尽き。主人公がカノンを見つけたのか、カノンが主人公を見つけたのか。
 最初稼いだ50万をカノンに渡したくだり。

 彼女に貸した金は締めて九万とちょっと、しまったな……細かいお札はあっただろうか?
 俺が財布を取り出すと、彼女は不思議そうな顔で俺の事を見た。そして、手に持った金をこちらへ手渡した。
「はい、ハセやん」
「えっ?」
 手渡されたのは、四十万円が入った白封筒の方だった。
「いやこれ、飯田さんの分じゃ……」
「必要だと思ったから」
「え?」
「必要だと思ったら迷わず使うようにって、ハセやんが言ってたから……」
 再三言うが……俺は枚方カノンのファンではなかった。
 もっとお淑やかな子が好きだったし、もっと文化的な子が好きだったし、もっとギークな感じで、もっとしっかりした、自立した子が好きだった。
 たしかに、たしかにそうだったはずだ。だが、俺はお隣さんのあまりのポンコツさに惑わされて……完全に忘れていたのだ。
 眼の前にいる女は、元チャンネル登録者数、百万人超えの女。仮初の身体と口先で人を惑わす魑魅魍魎たちの、トップオブトップに手を掛けかけた女だ。
 不安そうな上目遣いでこちらを見る彼女の、その言葉とその行動、そしてその魔性は……俺の中にあったはずの何かを完全にぶち壊し、俺の人生ごと、その器の中に巻き取ろうとしていたのだった。
   (P41)

 その彼女のためにならば、というのがずれないで、箱を大きくしていく成り上がりは読んでいて爽快感がありました。
 それに作った箱の一期生も魅力的(特に中の男性Vtuberの設定は架空のものではかなり珍しい、わりと唯一無二のレベルでいけてるのではと思いますが)ですし、他の面々もちょっとした描写でキャラを立たせていました。
 やはりこの作品好きだなあと小説版を読んで改めて感じましたね。

 2巻発売も決まったようですし、今後もこの作品が好調でありますように。


 以上。おすすめ。

 

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