彼らは生きては敵を倒し死しては肉体が再利用されて新たな存在となる、楽園を目指す戦闘を繰り返していた。
終わりのない戦場である日突然、戦士は目覚める。
その時/肉を食う化け物と化した時から、本当の生への闘争が始まった――
本作はRPGのDIGITAL DEVIL SAGA アバタール・チューナーシリーズの原案を小説化した作品となるようです。しかし私はゲーム群をプレイしたことがなく照らし合わせることができないので、純粋に小説として楽しみました。
5巻組でそれなりに長いのですが、悪魔と化した人間の華々しい戦闘活劇と新たな局面を目の当たりにした人間の思弁の拡張を推進力として、物語は淀みなく最後まで走りきります。ノンストップなエンターテイメント作品としてかなり優秀だったかと。
「光流体回路、オープン。〈神〉との接続ポートを開きます」
(アバタールチューナーⅢ(ハヤカワ文庫JA)(Kindleの位置No.3385))
神/超越者/上位種/オーバーロード――SFは『それら』を取り上げてきた歴史も有しています。
理解しえぬもの、崇拝すべきもの、服従すべきもの。
何故そう在るのか。
神とは何か。
本作もまた強く、叫ぶように問いかけていました。
繰り返す戦闘を強いられていた世界の人間も、太陽の光を浴びると結晶に化していく世界の人間も、そう生きるように強いる存在へアクションを起こします。祈り/請い/逆らう――自分たちがそう自ら定義する人間として生きていけるように。
それが、その当たり前の人間の在り方が、根本から間違っていた――というのが本作の凄いところでした。
これまで散々嘆いて悲しんできたドラマをも含めてどう間違っていたのかあたりの論理はこれぞSFという醍醐味でした。
その上でどう振る舞うのかを登場人物が決意するとき、それ以上語ることはなくなり、物語は幕を下します。語るべきことを存分に語り終えた上での締めはなかなかないぐらいに満足が行きましたね。
あとはそう、なんかかなりキテいるBLSFだったのじゃないかなと思います。
人望のあるリーダー・サーフ、力と自立性を重んじてサーフ以外には従わない・ヒート、冷静沈着な参謀がリーダーの人間性に惚れ込んで崩れていく・ゲイル。彼ら3人の共闘と対立は芳醇でした。
Ⅴ巻で訪れるサーフとヒートの因果の結末に胸ドキュン!!
以上。大変面白かったです。逆にこの原案をどうゲームに落とし込んだのか気になりますので、リメイクして欲しいですね―。
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