ケモノガリ2 感想

 身体と心が殺人に特化した少年が独裁国家に元首を暗殺するため入国し、途中で革命に身を投じた妖精のような美貌の少女と知り合い惚れられる――という物語。
 これでこそと膝を打つ中二傑作でした。


 殺人のためにケモノのような身体能力と心をもつと同時に、思春期の平凡な感性をも有する主人公。普通に歩くだけでも異能を魅せつける彼の万全ならばほぼ負けなしと思わせるスペックに何度も幾重にも負荷をかけて、俺最強から遠ざけようとします。1巻では片目を潰し、本作では近位で重傷を負わせ、遠位で爆弾をしかけます。にもかかわらず/だからこそ克服し、負けず/死なず――敵を殺します。

「それで? 結局、お前たちは何人死んだ?」
 (P231)

 という問いの答えである単なる数値に打ち震えました。1国を1人で相手にするとはこういうことかと。
 また敵は世界と近似であり、性格・武装共に巻を重ねてインフレ真っ最中です。しかし天性を振るう限り、彼は勝利しか与えられません。
 アクビが出るほど見慣れている筈の、単騎での戦闘で勝利するというルーチン。でも実はアクビが出るほど見たいのだという欲望を見事に掘り起こせられました。
 

 ヒロイン。そう、新しいヒロイン。前巻の古女房は出会ってしまったら閉じてしまうと後書きにおいて宣言されるまでもなく了解しています。だからこれからは新しいヒロイン――美少女が出るとすれば、最強である主人公に惚れて振られか、敵対して殺されることになるでしょう。その甘美の第一歩をここに見ました。
 妖精のような美貌と意地っ張りな気質と泣き虫とがバランス良く融合したヒロインは確かに魅力的でした。魅力があるからこそ、彼女が主人公に近づき、何もかも失って、生命だけは得る経過が甘美なるです。


 以上。中二心を置いていかない為に必須な傑作でした。そして続刊で更に何を見せて貰えるのか、とても楽しみです。

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ケモノガリ 2 (ガガガ文庫)
東出 祐一郎
小学館 (2010-07-17)
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