文学少女対数学少女 雑感

 推理小説を書く趣味を持つ女子高生・陸秋槎を主人公としたミステリの短編集。
 陸秋槎が犯人当て小説を書き、数学の天才の少女・韓采蘆がその小説の論理性の問題点を上げ、その問題点の解消が現実に起こった事件の解決に結びつく、というのが基本の展開となっています。
 論理性の問題点。
  -その命題は真偽を厳密に判定可能なのか――そのミステリに用意された謎解きは矛盾なく完璧なのか。
  -その予想は予想された時代までのテクニックで証明されえるのか――そのミステリの謎解きには既に書かれているか自明の知識以上が必要なのか。
 などなど、どれもこれもいかにして本格推理小説を成立させるのかという構造の強度への挑戦であり、まさしく日本の新本格の潮流の一つでした。
 
 合わせてこちらは特に土台を疑問視せずに、頭でっかちの女子高生たちの百合が盛り込まれていました。
 いきなり裸にされて背中を切り刻まれるという衝撃な出会いをした陸秋槎と韓采蘆とが友人として良い組み合わせになる友人百合。とりわけちょっとした肉体的な接触を厭わなくなり、風呂で片方が湯船につかり、もう片方が服着たまま見下ろして髪を絡めるとか最高でした。
 そうした一対一の関係だけでも美味しいのですが、そこに三角関係がうまーく組み込まれるのですから、その判り具合にデレデレしてしまいます。陸秋槎のルームメイトで気の強い少女の陳姝琳が陸秋槎を引っ張るもう一点として良い風に働いていたのです。特にラストの解決には胸キュンでした。
 無理にいちゃもんをつければ短編間で時間が飛び過ぎであり、仲良くなっていくじれったさの経過があまり楽しめなかったことですかね。推理小説としてはしょうがないですが、もっとこう、頭でっかち同士の高校生活の機微を味わいたかったところ。


 以上。推理小説としても百合としても秀作であり、楽しめました。今後も翻訳待ってます。

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