人間デブリ 感想

  • 前置き

 最初に、本作は出来るだけOHPぐらいの前情報でプレイすることをお薦めします。
 『媚肉の香り』が好きな方、CGが気に入った方etc、思い切って買っちゃってプレイしてみてください。たとえ序盤で躓こうとしても、我慢して進めましょう。詳しくは言えませんが、主人公を操ってプレイしているあなたよりも、そして主人公自身よりも、主人公を信じている女性がいます。その女性の存在を信じて最後までプレイすれば、綺麗な風景が現れますから。
 付け加えると、本作は極上この上ない年上ヒロインが居る清濁併せ呑んだ傑作となっています。
 後は次の“絵&エロ1”まではネタバレがないので参考までにどうぞ。

  • 絵&エロ1

 絵は一目瞭然、非常に美麗です。等身大の女性の美しさという評価軸ではこれ以上ないぐらいのレベルでしょう。ヒロインは空とひかりの姉妹だけなのですが、どちらも魅力十分であり、目の前に現れる美女・美少女としては2人だけでお腹一杯となります。空は切れ長の眼・巨乳で美乳・高い身長と理想的なS的な年上冷徹美女として、ひかりはほどほどの形の良い乳とやや目尻が垂れ気味の童顔の可愛らしい同級生として完成しています。・・・・・・見る所が性的に寄るのも当然、美しい彼女たちは性的なシーンでより一層輝いていました。
 性行為の前段階――例えばふと覗いたパンストだったり、胸の谷間だったりも、彼女たちの肢体に纏われているからこそ、映えていました。
 性行為は静止画と動画で表現されるのですが、動画――乳の揺れや体動――は美麗な静止画と大きく解離せず、美しい肢体の動きとして自然でした。ぬるぬる動き、大変そそられました。また動画は女性だけではなく、精液の飛散にも効果的に働いており、ヒロインたちの顔や体に付着する様もエロティックでした。汚れている感が半端無かったですね。


 とまあ質は保証してきましたが、量はと言えば、2人ヒロインと言えども充分量ありました。
 連続したシーンでは25いくかいかないかぐらいですが、1シーンの時間は長く、加えてあえぎ声ばかりの間延びしたものではない濃密な時間となっていました。濃密であった所以は性描写がヒロインの感情描写になっていることと、エロシーンの癖という言い方も変ですが二転三転する先が読めない構成となっていることと、動画・差分をふんだんに使って眼を飽きさせない工夫とに拠ります。つまり感情的も物理的にも変化をつけていて、性的なものを静的にさせない――ということですね。
 だからこそクリックしてもクリックしてもなかなか性行為の終わりが見えず、そしていつの間にか何もかもが決定的に変化している――という不思議な体験ともなっています。まあ終わりが来てしまったら、大体ごにょごにょ。


 端的に言えば、めっちゃ抜ける――という話です。
 シチュエーションに関してはネタバレを兼ねているので後述します。






 それでは以下ネタバレなので格納。ご注意ください。












  • シナリオ

 『河原崎家の一族2』『臭作』『鬼作』『媚肉の香り』『女系家族』etc、elf系列のゲームはそこそこプレイしているのですが、シナリオライタ・絵師などが全く変わっていても、舞台が全く違っても、かなりの確率である共通したテーマが見え隠れしていました。
 そのテーマとは“操り”です。
 プレイヤと主人公視点の解離や周回プレイをループに捉えたメタなものから、黒幕が主人公の行動を操っていたという直接的なものまで“操り”の関係が作品を理解するのに重要なものとなっていました。1、2作だけなら兎も角、ここまであると拘りと取りたくなります。個人的には“操りのelf”と賞してみたくもなりますね。
 それで本作についてもそう――というか、はっきりと前面に出ています。具体的には“催眠”という手段で。


 冒頭から途中までの主人公視点の思考と行動で主人公はかなり嫌な卑劣漢であることが示されています。頭の悪い人間はくずだという鼻についたエリート意識、幼馴染のひかりへの暴言と暴力などなど投げ出したくなるほど卑小でした。そしてOHPの紹介にあった趣味である手を洗う行動が繰り返されるのですが、これがまたいい感じに病的に書かれていました。次いで成績上位の学生を襲う事件が周囲で頻発し、犯人であることが示唆されます。そんなことが重なった上に、ひかりの姉・空を襲います。これはもう主人公が残念な悪人なことが決定的であり、ピカレスク物なのか――と思わされました。
 ところがどっこい、空を襲い脅して凌辱し、付属してBAD ENDで屋上から飛び降りまくり、徐々に違和が積み重なっていきます。もうすぐ結婚するはずの空の主人公に対する張り詰めた言動、主人公の住んでいる部屋、主人公の回想での空との穏やかな過去、一つのBAD ENDにおける信頼していた友人のそれまでの主人公の凌辱をリピートするどんでん返しetc。
 そして屋上において催眠をかけた存在と空の婚約者が凌辱者としての本性を現し、姉妹の凌辱が繰り広げられます。結果、催眠により主人公の行動は操られたものだったということが明らかになります。
 このこれまで全てが催眠によるものというやや反則寄りの結論には賛否があるでしょうが、個人的には全体像が美しかったので大いに賛を唱えます。


 プレイヤが操っていた主人公の思考は操られていたものであり、主人公を操っていた存在のものと同一であった――という像。そして催眠による操りが明らかになっても、空というヒロインがどんなに汚されてもかけがえなく偏愛し、敵が憎みぬいた、主人公の思考は主体的には働きません。この像はどんなに変化が生まれようと幸せな終わりを迎えません。
 散々嫌な終わりを迎えた上で、新たな――最後の筋道が付け加えられます。それは催眠が解けかけるという催眠物のグランドルートのお約束のものなのですが、再構築となっているのが特異です。今まで無理やり露わになっていたものが全く明らかになりません。空の婚約者は最後の最後まで悪人面を出さず、催眠をかけた人間は計画していた凌辱を果たせず、空との穏やかな過去回想がメインとなります。そして何よりも前のルートでは自慰しながら語らせられるという最悪で露わになった空の主人公に対する思慕が隠されたものとなります。主人公が7歳の頃から募らせ、どのようになろうとも信じた愛情/劣情が無理やりに露わにならないのは良いことのはずですが、なんとも困ったことに空の行動を主人公に説明するものとならず、幸せなはずの結果が循環不全となり、見ている側としては情報を全て得ているためにもどかしく思わされます。だから以降の操られないでどのように頑固な殻を破るかという迂遠でもどかし過ぎる蛇足のようなエピローグににやにや出来るのですが。


 これらを総括した情報の使い方――全体像はたいしたものといっていいでしょう。見事な操りでした。
 なおEDムービーで操りであることをもろに示していると指摘しておきます。

 空姉さん。別名おっぱい姉さん。本作は彼女に会うためのゲームであったとも言えます。
 絵的に見事なSな年上冷徹美女であることは前述しましたが、中身も実に硬質に描かれます。描かれるのですが、主人公にぞっこんであることが明らかになると、以降の彼女の行動全てが照れ隠しと判るようになり、無茶苦茶萌えるようになります。命令で主人公に笑ってパンツ丸見えの写真を撮られる時、或いはキスを強要されてぐるぐる歩き回った時、或いは単に手を握った時に、彼女が何を考えていたのか直接は描写されません。しかし何を考えていたのか、どうしようもなく伝わってきます。この解離――“シナリオ”で述べた2ルートによるプレイヤの情報量により、空の行動原理が明らかになった上での描写しないことでの感情描写は圧倒的に彼女がどのような人であるのか伝えていました。
 それにしても何でそこまで愛するのかというぐらいの愛情を持つヒロインであり、自分の愛情を最初から最後まで上手く伝えられない厄介な年上ヒロイン。その最高さは純愛だけではなく、凌辱を合わせて伝えようとしたからこそ強固なものとなっていました。
 繰り返しになりますが、だからこそ奇怪で迂遠なエピローグになった訳なのですが。

  • エロ2

 最後にエロシーンのシチュエーションについて。
 催眠エロは基本の極意をついていました。嫌がる意識はそのままに体だけ意のままにして嫌がりながら快楽に落とすパターンや、意識を意のままにして快楽に耽らしてから醒めさせて絶望させるパターンなどなど。1で述べたように主人公への感情が人為的に上下する感情描写をふんだんにしていることから、空の愛情を確認しながらでもあり、より一層NTR的にかなり興奮しました。
 ひかりは逆に催眠エロではなく、派生した凌辱エロが良かったですね。特に醜い岩尾に立ちながら犯されて、主人公に意識を塗り替えられていくくだりは素敵にエロかったですね。

  • まとめ

 以上。空姉さん最高!ということで。

  • Link

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