おすすめSF小説15選

 何か機運っぽいので選んでみました。こういうものを書く度に言っていますが、選ぶ過程で自分が超楽しいのが重要です。
 選んだコンセプトは『これは凄いものを読んでいる』と思った作品です。

  • 天の声

天の声・枯草熱 (スタニスワフ・レム コレクション)
スタニスワフ レム
国書刊行会
売り上げランキング: 244,125
 宇宙からのメッセージらしき情報をえんえんと解析し仮説を立て続けるグループの学者が発表したレポート形式の小説。徹底的に理詰めで天を追い詰めていくのに、頭の中をぐるぐるにされた。

  • 虎よ、虎よ!

 平凡な男がどん底に堕ちながら蘇り、自分を見捨てた者を追う追跡物+復讐劇。泥臭くて格好良いのに痺れました。

  • 星を継ぐもの

 

 みんな大好きホーガンの名作。科学者らが屈託無く壮大な謎に挑む無邪気さはこの作者特有の美点でしょう。

  • 高い城の男

 

 みんな大好きディック作品。現実・認識崩壊物とB級SFを書かせればそうそう並ぶ者はいません。私もその日の気分で上げる作品が変わります。どれが一番好きかだと『ユービック』ですが、代表作はどれだと言うとこれかなあと。オルタネイティブ・ヒストリー物の秀作で、何でこの人達は易経を行動指針としているんだろうという疑問がフックになって実に楽しめます。

  • 故郷から10000光年

 

 ティプトリーは全部読めば良いんですが、読んで一番楽しめるのはこれかなあと。明快なスペオペあり、超絶技巧の短編あり、読みやすくてワクワクできます。

 

祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)
グレッグ イーガン
早川書房
売り上げランキング: 30,367
 イーガンも基本的に全部読んでも外れは無いですが、この短編集が一番読みやすかったです。『しあわせの理由』『プランクダイブ』『ひとりっ子』の方がエンタメ色も強く、SF性も洗練されています(発想の良さは別ですが)が、野暮ったいからこそ発想が輝いていた気がします。

  • 不思議のひと触れ

 

 スタージョンは個人的には異色短編作家としてナンバーワンと思っています。この短編集と『海を失った男』は問答無用でお薦め。
  →具体的な感想はここここを。

 

 『シェイヨルという名の星』『鼠と竜のゲーム』の3作は素晴らしい。リリックで、寓話めいて、格好良い。というかSFとは格好良い物だと教えてくれた作者。惚れた人は一生離さない魅力があります。

 

ディファレンス・エンジン〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)
ウィリアム ギブスン ブルース スターリン
早川書房
売り上げランキング: 136,487
 19世紀にありえた最先端のテクノロジーによる世界の改編を夢見た歴史改編物にして、テクノロジーが夢見た世界を描いた作品。ここからサイバーパンク物に行くのも良し、スチームパンクに行くのも良し、hub的な傑作。

  • 都市と都市

 

都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)
チャイナ・ミエヴィル
早川書房
売り上げランキング: 13,701
 1つの土地に2つの国家が混じり合った地域で殺人事件が起こる――。決して互いに認識してはいけないのを文章で違和感なく無理なく成り立たせた時点で勝利しており、そこから大きな物語に展開して、美事に個人へと畳まれていく。現代SFの傑作の1つ。

 少女と少年と出会いの不可解性について格好良く書いた変な短編集。文章を読む快楽と文章を理解する困難とが両立していて、希有な読書体験でした。

  • ハーモニー

 説明不要の傑作。個人的に表紙はこちらでないと落ち着かないと思ってます。

  • ラギッド・ガール 廃園の天使2

 

 SFによりおぞましい人間を描き、おぞましい人間でSFを描く、美しい作品です。

 

 正体不明の敵と戦闘AI搭載の最新鋭の戦闘機に乗った人間とがドッグファイトを繰り広げる――と書くとエンタメに特化したSFぽいし、それもまた間違いでは無いでしょう。認識の理解、認識の伝達、認識の変容を言語化するのが作者特有なのだけど、巻を重ねるにつれて思弁性が嵩じて病気になっていくのが楽しい。『グッドラック』がベストかもしれませんが、人間が人間性に疑問を持ちながら戦闘AIを信じることにより人間性を回復する手続きが繰り広げられたこの巻を個人的には持ち上げたいところです。
 具体的な感想はここに。

BEATLESS
BEATLESS
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長谷 敏司
角川書店(角川グループパブリッシング)
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 人間性の最先端。あるいは『アナログ・ハック』というガジェットを具現化して提起し、今後誰もが考えざるをえなくした問題作。