ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン Ⅰ~Ⅹ 雑感

 VRMMO<ガンゲイル・オンライン>を舞台にしたSAOの外伝小説。
 銃火器武装のメインという世界は作者・時雨沢恵一さんにとって自家薬籠中の物。結果として、VRMMOでサバゲーを思いっきりやろうという非常に趣味的な小説が降臨したのでした。

 主に描写される内容は<スクワッド・ジャム>。本家のBoBは個人戦でしたが、本作では最大6人がチームを組み、用意されたステージ内で撃ち合い最後に残ったチームが優勝になるチーム戦の大会です。10巻までにこの大会は4回開催されます。
 全巻8割ぐらいはサバゲー描写で占められているのですが、VRMMOの旨味とサバゲーの旨味とが絶妙にマッチしていて飽きることなく楽しめています。

 面白かった点として、同じ相手と以前の手の内が分かった上で互いに成長しながら何度も戦うことがあります。これはスポーツ物や部活物の楽しむポイントと同じで、例えば河合克敏作品が挙げられるでしょう。
 メンバー・ベースとなる武装・用いる戦法・思考回路はある程度把握しているけれど、長所を伸ばしたり欠点を補うプラスアルファをかましてくるので、前と全く同じと考えると痛い目に合います。難敵がさらに嫌らしい敵になっていたり、意外な敵が予想外の急成長を遂げていたり、あるいは呆気なくメタったり。それに大会では毎回毎回新しいフィールド・新しいルール・みょうちくりんなガジェットが出てくるので、戦場で情報を得て整理しながらそれらを活かしながら即興で対応していくことになります。
 その繰り返しが楽しいんですよね。今度はそんな武器を用意してきて、そういう使い方をするのか――という作者のセンスと合わせて、何を見せてくれるのかわくわくする観戦客に只管なっていました。

 あとはプレイヤがVRMMOに、しかも銃と硝煙と溢れた荒廃した世界観のに、巻を重ねて慣れていき変容していく過程が笑えました。割と大体、殺伐としていきます。
 例えば主人公は現実世界では高身長なのがコンプレックスの女子大生で、理想としてちっこくてピンクいキャラのレンをプレイアブルにしています。ピンクの服装は荒野の地形に溶け込み他プレイヤからの視認性を悪くさせ、敏捷性をメインにスキルを割り振って高速で走り回るAGI特化のアタッカとして成長を見せるのですが、それは対人戦闘のスペシャリストになるということで。いろいろと経験を積んで、大会を何度も参加して、何度も殺して殺されて、ふとした鉄火場で言葉遣いが荒くなる――ぶっ殺す――、銃で撃って致命にした後にナイフでぶっさしてとどめを笑いながらさし、いざという時には五体を武器にして敵に食らいつく女子大生ゲーマーになっていきます。いやあ、そういう萌えがあるんだとにこにことしました。
 その他では北海道で猟師を営みリアルで銃を撃つシャーリーが作品では猟師の修行のためとしてモンスター戦闘のみに終始していて対人なんてもっての他となっていた筈が、という堕落っぷりには爆笑しました。


 以上。こういう小説を書かせれば右に出る方はそうそういないですし、このコラボはこれ以上ないシナジーを産んでいました。

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