ブレードランナー2049 雑感

 ブレードランナー"K"は逃亡していた旧型レプリカントを始末した。殺される前レプリカントは「かつて奇蹟を見た」と言い残す。その通り、逃亡先の農場の木の下から世界の秩序を揺るがす奇蹟の産物が発掘された――


 という出だしのブレードランナーの続編。
 前作と同様に追跡物なのですが、2つの強烈な謎に牽引されるサスペンスが非常に優秀でした。
 曰く、"K"が追うのは誰なのか?
 曰く、"K"は誰なのか?
 どちらかが真なら、もう片方が偽となる。
 故に2019年に何が起こったのか――が謎の中心となり、その謎を隠そうとする者と明かそうとする者の闘争ともなっています。
 気を抜くと置いてけぼりにされる結構複雑なストーリーラインを、気を抜かせないサスペンスフルな追跡物としてまとめあげており、凄いの一言。
 

 そもそも翻ってまず冒頭が見事過ぎたのです。
 冒頭――本作の始まり/2019年の過去が強制的に息を吹き返される奇蹟の産物の提示。
 木の下にあった鞄の中身を浚い、判ってしまったのは2つのこと。
 彼女はもういない、そして新しい存在がいる。――いやあ、続編として、あまりにも正しすぎます。


 光線の入り方に重きを置いていた前作とことなり、本作では砂漠とか警察署とかシーンごとに映像の陰影のメリハリはしっかりしています。
 なので全体的な格好良さとしては前作に譲りますが、この世にありえない光景を映像化するというSF映画としてのある種の本領をきちんと発揮していました。
 また凝った構図と合わせて極めつけに印象的なシーンを作りえていました。
 一つは"K"とデッカードの対決。暗闇でキング・オブ・ロックンロールのホログラムが歌い躍るのは目に焼き付きました。おそらくしばらく心に残るでしょう。ただこの対決シーンそのものが要るのかしらんというあたり、甚だ画竜点睛を欠きますが。
 もう一つは"K"とAIとの絡み。あのシーンはもう観てくれというしかありません。非常にエモーショナルです。どう評価してもこの映画はSF映画史上最高ではありませんが、このシーンだけ取ってみれば映画史上最高の濡れ場への導入シーンと言いたいところ。映像の奇妙さと、そうしようとする思考の奇妙さが合わさり、空前絶後の代物に仕上がっていました。

 
 以上。いささか長いですが、楽しめました。

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 OHP-映画『ブレードランナー2049』 | オフィシャルサイト | ソニー・ピクチャーズ


 ブレードランナー ファイナルカット 雑感 - ここにいないのは


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