衒学始終相談 1 雑感

 女子大生の「わたし」は何を研究しているかわからない天才の「先生」と出会い、彼女のポストをいずれ乗っ取るために共に行動していく――

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 「わたし」が「先生」の研究に巻き込まれて、ちょっと大変な目にあいながら衒学的で胡乱な言葉を交わていくのですが、軍用機の姉妹機を作成するために披露される妹観とか、世界のあらゆるところに潜む魔女のサインとか、つかれるホラがツボで読んでいてにやにやしっぱなしでした。
 『児玉まりあ文学集成』で十二分に妙ちくりんな言葉のやり取りを楽しんだのですが、本作でも相変わらず登場人物2人の会話が非常に面白かったです。

 しかもシスターフッド要素が加わって、本当にありがとうございますという感じ。
 「わたし」は業績をかすめ取っていずれ成り代わってやるという野心を抱いて近づいたのですが、「先生」のやってることと考えていることを知るうちに、あれっ・・・? この人やば過ぎるのでは・・・と段々なっていきます。

 kindle No.80)

 でも離れられない――という依存の萌芽が良いですし、「先生」との関係に他者がかかわってくるときのアンビバレントな対応がほんと味わいぶかい。
 そしてそんな「わたし」を観察する「先生」がひょうひょうとして何を考えているかわからないと描写されても、「わたし」に対して大きすぎる情念を抱いているのも伝わってくるんですよ。「わたし」にわかってほしい"かのように"隙を見せて執着を表出させていても、「わたし」はそうあることを思いもしないために決して理解が出来ない。
 「わたし」と「先生」が会話でコミュニケーションを取りながら、相互理解の不一致が起きていて、いつその関係性が良きにせよ悪きにせよ壊れるかわからない――これぞ百合ですよ、百合!!!!


 以上。できれば長いことこのシリーズを読み続けたいですが、すぱっと終わりそうな予感もします。いずれにせよ続きが楽しみですね。

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 <同作者作品感想>
   児玉まりあ文学集成 1-3 雑感