筺底のエルピス 6 雑感

「ゲオルギウス、三なる天使に面し、其は何者ぞと問う。三なる天使答えて曰く。我々はアルファ、ベータ、オメガである。始まりであり、継続であり、終わりである」
  (筺底のエルピス6 -四百億の昼と夜-(ガガガ文庫)(Kindleの位置No.3793-3795).)

 約1年半ぶりに出た待望の新作は根幹に触れようとするものでした。
 憑依された個体を同族殺しに駆り立てる殺戮因果連鎖憑依体<鬼>を<天眼>と<停時フィールド>を用いて殺し、自らに<鬼>を憑かせて仮死状態に陥り、人類が滅亡している1万年後に通じるゲートを通って<鬼>を降ろしてくる――というある種壮大な<鬼>との戦いを書いてきた伝奇SFの作品世界。
 今そこにある社会も、テクノロジも、宙に光る月も星も、語られた闘争を説明する必然を秘めていました。月に行くほどテクノロジを発達させた人間が生きる現代の地球だからこそ、これまで悲痛と苦難とちょっとした喜びとで彩られた物語が語られえたのです。
 伊達や酔狂ではない副題を通し、膨大な数と、祖となる数に意味が持つことを知る知的好奇心が満たされる唸りと、その意味の恐ろしさへの慄き。
 成り立ちを識る、真実を解き明かす。
 ――それに耐えられるのか、或いはそして耐えて戦え、と本巻では新たなる/そしておそらくは最後となる戦いの準備=心構えが試されます。

 そういう小説が、面白くない筈がなく、読んでいて大いに楽しみました。
 ただこれから更に1年以上待たされるのは辛いので、早々に新刊が発売されてほしいですねー


 以上。設定厨歓喜の一作という感じでした。

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 <過去感想>
   筺底のエルピス 1-5 雑感