OBSTACLEシリーズ 激突のヘクセンナハト 1-4 感想

 川上稔による魔法少女の物語。
 最強の魔女を決めるランカー戦と、【黒の魔女】が10年に1度月から襲来するヘクセンナハトとを4巻で書き上げています。
 使い魔、変身、固有の異能、必殺技、巨大ロボ――魔法少女物と変身物のお約束を川上稔的なものとしか言い様がない何かで濃厚に味付けされていました。 
 スケールもでかく、必殺技を放つ武装は500km以上から数kmまで。バトルフィールドも北極から南極までかっとびまくります。
 ド派手な戦闘に物語の強度も負けず、それでいて無体に肥大していかないため、非常にリーダビリティが高かったです。 


 そして百合。
 重ねて言いますが、百合。芳醇でした。
 異世界からの訪問者――各務鏡。
 最強の射者――堀ノ内満。
 2人の魔法少女がメインヒロインとなのですが、そのカップル具合が最強でした。
 始まりの戦闘に重ねた会話がこちら。

「問いますわ!」
 問うた。瞬間にはもう射撃を放っている。
 連射だ。朱竜胆を振り、その動きも利用しながらの多重速射を堀之内は叩き込んだ。
 青の空が、白の月を持つ天上が、一瞬で赤光の怒濤に埋まった。
 弦の高鳴りを終える事無く、堀之内は叫んだ。
「貴女に、何が出来ると言いますの!?」
 問うた先、各務が応じた。
 彼女はただこちらに刃の先端を向け、
「──望むならば、君を幸せにしよう、堀之内君」
 こちらへと、白の聖騎士が瞬発した。
         (『激突のヘクセンナハト 1』、Kindleの位置No.1492-1502)

 各務は泰然自若と振る舞い、欲しい者に嘘をつかない、いつもの川上作品のバカで。
 堀ノ内は防御を張りに張って、がちがちに固まったおぼこで。
 だから、待つ各務を堀ノ内が追っかける展開になるのは必然でした。
 幾多の戦闘を重ね、心の奥底で何かが溜まっていき、ふとした日常に赤面し、意識していく堀ノ内が良いんですよね。そういうシーンが多い訳ではないのですが、要所の何気ない仕草で意識と無意識の変容を見事に表し、読者のハートを打ち抜いてきます。
 とうとう愛が爆発する最終巻は眼福でした。


 以上。川上臭に満ちた上で、質量ともにコントロールされた秀作。好きなシリーズです。

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