あの娘にキスと白百合を1,2 雑感

 中高一貫の女学院物。主人公は固定されず、2-3話でメインのカップルが変わっていきます。例えば万年1位と万年2位だったり、帰心の知れた幼馴染だったり、年の差カップルだったり、立場はそれぞれ千差万別です。
 共通しているのは、どれもこれも、誰も彼も、『好き』になった感情の発露がお見事でした。
 最初の数話は天才として遠ざけられるのに飽いて乾いる天才キャラに死に物狂いで努力しながら万年2位の秀才が挑む話なのですが、天才が秀才に「お前を倒す」と宣言されて恋に落ちる姿に、読んでいるこちらも胸がどきゅんと撃ち抜かれます。一途な想いを一途に受け止める純粋さの交流を、読書によって目の当たり出来るのは幸せと言っていいでしょう。


 (あの娘に白百合を1、No 47/187)

 思いを受け止め、答えを返す。なんて嬉しそうな、その笑顔。
 まあその交流には多大なすれ違いがあったりするのですが、超えるのを待つ方が強く求めて、超えようとして手を伸ばす方が追い求められ、いつのまにやら一途さの強いほうに巻き込まれてラブ時空に流れていきます。いやあ最高にラブコメじゃないですか。
 次に他のカップルにメインが映っても、それまで出てきたキャラクタはサブでも物語を彩っていきます。天才と呼ばれるのが嫌がっていた彼女は徐々に箍が緩くなり、彼女に対して友達一号と推しかける無邪気な少女が困っていた時に現れて助ける際に「天才」と呼ばれた表情に萌えました。


 (あの娘に白百合を2、No 27/186)

 「まあね」という答えと笑顔によって、恋と成長により度量が広がったのだなあと推し量ることが出来ます。
 

 ここまでは黒沢という天才キャラを中心に語りましたが、他にも色々と出てくるカップルの誰もかれも魅力的な上に、『好き』を抱えながら目いっぱい今を楽しそうに生きていきます。
 クオリティの高い美少女の絵で、こんな楽しそうな女学園ライフを見せられたら、読む側も楽しまないと損損。
 舞台裏で密やかに語られる百合な1Pのおまけを含め、幸せな読書体験を保障します。


 さて、最後に2話の後半で出てくるカップルがこれまたあまりにもスバラなので紹介して終わりとしましょう。
 とある直情的でアホな中3生が禁止されている自転車通学をして、風紀委員の高校1年生に発見され注意されるのですが、注意した相手が気になってつい追っていってしまうという王道の流れ。このアホな娘が素直になれず自分の感情さえ解らないまま気の向くまま相手を追っかける一連の流れにきゅんきゅんするのですが、クライマックスでようよう追い求めた相手を肩に抱き、その相手が好きだった卒業生を前に「あたしに任せて卒業してって」と宣言するシーンの見事さといったら。風紀委員の表情と合わせて、アホな娘は強いし、幸せ大爆発という感じ。そのページの彼女たちの表情は、とても勿体なくて引用できないので、是非読んでみてください。


 以上。大変素晴らしい百合物でした。まだまだ続くということで超期待しています。

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