『からかい上手の高木さん』の主人公二人が子持ち夫婦となった未来を描くスピンオフシリーズ。
基本的には他愛ない日常をとりあげた、他愛ない作品集です。面白いと手放しでほめるものでもなく、本編が好きなら惰性で読むかなレベル。
ただ本作の一編ですごい胸キュンとしてしまったので、さらっと感想を書いてみるテスト。
キュンと来たのは「コーヒー」と題された短編。
学生時代に西片くんがブラックコーヒーが飲めるんだぞという嘘をついたことから発して高木さんにいじられたというエピソードを踏まえています。
大人になって西片くんはコーヒーが飲めるようになっていました。
多少は我慢しても飲めるようになったと。
それを子供に羨ましがられ、調子に乗った西片はコーヒーのおかわり注ごうとしてしまいます。
多分、これが自分でおかわりを注ごうとした初めてで。
――ここからのオチはまるわかりでしょうが、言ってしまえば、苦さに我慢できず震撼してしまうのです。
この短編から判るのは、
・家以外でコーヒーを飲まない。というか妻がいれたコーヒーしか飲まない。
・万が一おかわりしても、妻がついでいた。
・そのうえで苦手だけど、我慢しても飲めるような大人になったと勘違いしていた。
とうことになります。
奥さんたる(元)高木さんはこれまで、それらを全て承知し、内心にまにましながら、隣に座っていたのです。
いやあ、なんたるお似合い夫婦なことか。おしどり夫婦さえ生温い。
これもまあ凄い仕掛けだとかどうこうではありません。だからこそ何気ない日常で、これまで2人が歩んできた人生の豊潤さをさらっと感じさせる瞬間として、胸がときめいて止まりませんでした。
以上。偶に輝く瞬間があると判ったので、このシリーズも買い続けるなじゃないかと。
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