裏世界ピクニック8 雑感

 理解のできない恐怖をあおる異形と異常現象が跋扈する裏世界を女子2人組が探検する百合ホラーSFの第8巻。

 過去の因縁にして脅威であった閏間冴月を祓い清算した後、鳥子は空魚に対して踏み込んだ――という出だし。

「私、空魚が好き」
「……知ってるよ」
「じゃあ──空魚は?」
 (宮澤伊織.裏世界ピクニック8 共犯者の終り(ハヤカワ文庫JA)(p.15))

 丸々1冊、空魚が鳥子からの告白に悩み惑います。
 空魚から見た鳥子は裏世界を共に開拓する共犯者という無二のパートナーでそれ以外の関係性なんて必要なんだろうかというのが立脚点で、対して鳥子から見ての空魚は自分に対して見惚れ過ぎで好き好きオーラが出ているにもかかわらず色恋沙汰には反応が鈍いよくわからない相手となっています。
 共犯者が終わる先にどういう関係へとなっていくのか、実に百合的に最高で、にやにやと楽しませていただきました。
 あと失敗に終わろうとした初体験が斜めに上にかっとんでいくのは盛り上がりましたし、その上で名前を含めて美しいイメージで帰結するとはと大いにびっくりしました。
 や、駄洒落と言えば駄洒落なのですが、関係性をただ一文字で顕してしまったそれは、あまりにも綺麗で――。


 以上。素晴らしい作品をありがとうございます。

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