カクレカラクリ 雑感

  レトロなアーティファクトが好きな男子大学生2人はちょっと気になる女子と彼女の実家の田舎にある工場を見に旅行することになった。その田舎町では宝を収めた絡繰りがどこかに隠されているという伝承が残っており、興味を引かれた彼らは一夏を宝探しに費やすことになる――


 殺人も猟奇的な事件も起きないけれども、奇妙でレトロでロジカルな謎と魅力的な仕掛けに満ちたミステリ。
 或いは理系大学生たちの青春もの。

「うん、まあ、客観的に見ても、君の夏休みとしては、これが生涯のピークになる可能性は高いと思うよ」
   (カクレカラクリ (MF文庫ダ・ヴィンチ)(Kindleの位置No.174-175))

 コカ・コーラとのタイアップで書かれた小説ですが、ちょっと驚くぐらい楽しい感じに仕上がっていました。


 カラクリや暗号に首をひねり、廃工場に目を輝かせ、謎解きのために山川を駆け巡る。
 気になるあの娘はちょっと意外でより惹かれる新しい面を出してくれるし、ちょっとした田舎の不便さもまたおかし。
 加えて出てくる人物はほぼ皆理性的であり、それぞれの理路が整然としていて、動機で錯乱されることもない。だから正しい理解を重ねれば、百二十年を超えた天才の業のきざはしにも届きうる――。
 
 夏休みを楽しむにはうってつけの舞台であり、そこで無邪気にひたむきに知的に楽しむために尽くされるのです。こちらも読んでいてわくわくとにやにやが止まらないのも当然だったかと。


 以上。爽快な小説でした。

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