筺底のエルピス 7 雑感

 3つのゲート組織は全て制圧された。
 当主・百刈燈は異星知性体に乗っ取られた。
 日本最強の棺使い・阿黍宗佑は殺されて、身体を改造されようとした。
 世界が終わるまで数十分、百刈圭らは再起を果たせるか――

 阿黍宗佑の再生が終わって敵の傀儡として本部の外に出た時には対抗する手段がない以上、その前の数十分で本部の7層に辿りついて燈を取り戻さないといけない。
 ただし敵は、これまで頼りになっているからこそ知る卓越した能力を有する教師役や先輩ら。なおかつ敵に操られるか鬼と化しているからこそ、全開でくるという絶望。
 圭が条件と能力と何もかもを見定めて作戦を立て、きちんと実行されることで打開しえるのか。
 そして最強であり全盛期の肉体で復活しようとしている宗佑の心中に顕れる、アンバランスだった教え子である圭への畏れ。

 ガオの勘は、百刈圭がすでにそこにいると告げていた。
 それほど恐れることか? と自分の中の冷静な部分が問う。
 ああ、と警戒する一部が答える。
 ぞわぞわと背筋を這い上る寒気は、神経接続が終わろうとしているからではない。長い時を戦い抜いてきたこの身が、本能的に敗北の可能性を知らせてきているのだ。
  (筺底のエルピス7 -継続の繋ぎ手-(ガガガ文庫)(Kindleの位置No.5308-5312))

 全編是相対戦であり、時限サスペンスとしてノリにノッた展開が繰り広げられます。
 有り体に言って、めっさ面白かったです。
 
 ルールがある程度カチッとしていてその範囲内でマウントを如何にして取るかを主眼に置いた能力戦を書く作品には、ジョジョ上遠野浩平作品、HUNTER×HUNTERなどそれなりの数があります。そういった一連は法則の作り方と運用が上手くないと恣意的で冷めてしまうのですが、本シリーズにおいてはそんな心配がありませんでした。
 これまで世界や能力に関して様々なルールが開示されてきて、<鬼>や<鬼の角>への解釈に対する感嘆から始まり、時間軸や距離感のスケールは膨大なものへと育っていきました。人の身でそういったマクロの法則を扱ったり目の当たりにする感覚の書き方、あるいは個々人のミクロの能力のルールの解釈と限界の想定して打破する計算の妙。
 7作目にあたる本作はその一つの結実かと。

 さて、最後に次巻の副題が明かされて終わります。
 いやあ、その不穏さと言ったら、読むのが怖くて――ほんと楽しみです。


 以上。傑作シリーズで大好き。どれだけ時間がかかっても良いので完結まで追い続けます。

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 HP-筺底のエルピス 7 -継続の繋ぎ手- | 小学館
 

 <既刊感想>
  筺底のエルピス 1-5 雑感
  筺底のエルピス 6 雑感