舞台はソマリア、墜落ヘリの探索救助に出た自衛隊員12名は民族紛争の虐殺から逃げてきた女性を保護したことから民族・ワーズデーンの武装組織とテロ組織とに狙われることになった。孤立無援の自衛隊員らは女性を守りながら自陣営がいる街を目指す――
逃げても、反撃しても、武装集団がひたすら追いかけて殺しに来る、執拗な襲撃。
また熱帯地域のソマリアの灼熱と、砂嵐と、豪雨という自然現象の猛威による足止め。
いずれも切り抜けなければ死が待つのみ。
自衛隊i隊員それぞれが己の技量を駆使し、死地を駆け抜け、生き残るために奔り続ける。
――ただそれだけを綴った、非常に硬質でスピーディーなアクション物でした。
決死の逃避行を迫真の筆致で書かれたノンストップサスペンスであるだけでも面白いのに、自衛隊員のキャラが立っている上に武張り方が格好良く、たまらんぐらい極上のエンターテイメントとなっていました。
合気道の名手。
オリンピックを目指していた元水泳選手。
機械いじりと運転に強い、自動車工場育ち。
バイクの扱いに長けた元暴走族。
人を撃てないスナイパー。
味方にも、敵にも、血飛沫が立びかう道程で、彼らがどう闘うのか。
できた──
銃はごく自然に朝比奈の手の中に移っていた。合気道『太刀取り小手返し』の応用である。文字通り敵の太刀を奪って投げる技だが、その技でAK−47を奪うことに成功した。
「認めたくはないが、他に手はないようだ」
梶谷が笑った。今度は夏休みの冒険を許された少年のような笑顔だった。
最高、いや、神業と称すべき狙撃だった。疑いようもなく津久田は完全に復調を遂げている。
友永は内心に快哉を叫んだ──見たか、これが津久田宗一の、習志野第1空挺の実力だ。
etc、etc。
無骨な輩を無骨に書き、甘さなどどこにもありません。しかし外連味は十分。例えば、ソマリアの捨てられたビル街で元暴走族がバイクをぶん回す描写を読む恍惚と言ったら、もう言うに言い表せない快感でした。
こんな小説を途中で読むのを中止することなど不可能でしょう。
以上。傑作でした。
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